恐らく今、新型コロナに感染して発症したり、重症化する人は老後が大変になると思いますので、よく考えていただきたいと思います。全部の人が感染して重症化するわけではないので、何らかの健康状態が関わっていると考えられます。介護が必要になれば家族や周囲の人たちの手を借りなくてはならず、自分も苦しい思いをします。周囲の手を借りずに命を全うするには、どうしたら良いのでしょうか。まずは日々の食事から見直して行くことが必要ではないでしょうか。
「健康長寿の専門家が明かす。健康寿命を延ばす秘訣とは」名古屋学芸大学大学院教授 下方浩史先生 元気の学校
日本人の健康寿命は短いと思われているが、OECD調査では、日本人は健康寿命も平均寿命も長い。世界のトップクラスなのに、日本人はそう思っていない。
日本は健康寿命も平均寿命もトップの国。しかも、平均寿命と健康寿命の差、つまり不健康な期間というのが比較的に短いのです。上位20カ国中で世界で第15位。割合で見ると、健康寿命と平均寿命の差が20カ国中18位。ということで、日本は不健康な期間が短いのです。健康寿命が短いと思っているのは、政府や医師会の広報によるところも大きい。
『健康寿命は、WHOが提唱した健康指標で、良好な健康状態を維持していると期待出来る年数』のこと。それを0歳の時から数えて予測したものです。寝たきり状態等、他者の支援がないと生きていけない期間を除いて、一人で自立して生きていくことが出来る寿命、それを健康寿命という。
問題は、平均寿命と健康寿命の差、つまり、人生の最後に寝たきりになってしまうような期間が、1,990年から毎年、毎年伸びているんですね。男性も女性も、これは世界中どこの国でもそうなんですが、日本も免れていない。このまま行くと、介護に擁するマンパワーがドンドン必要になってくると。特に日本は高齢者が多い国なので、高齢化が進んでいるので、介護自体がすごく大きな国の負担、個人個人にとっても大きな負担になっていく可能性が強い。
日本は2050年までに世界一高齢化が進むと言われているが?
西暦2,000年を超えた頃に、それまでイタリアが世界一だったんですが、イタリアを追い抜いて世界一の高齢化が進んだ国になりました。今もそうなんです。これから恐らく2,050年くらいまでは、国連が2,019年に発表した人口の将来予測で、2,050年くらいまでは日本が世界一の高齢化が進んだ国になり続けるだろうと。ただ今は、韓国が凄くて、ものすごいスピードで高齢化が進んでいる。これは2,019年コロナの前の推計なので、コロナの後は韓国がビックリするほど出生率が減っています。
だからこれよりも早く、日本は追い抜かれる可能性がありますが、しかし、そこの中で高齢化しても、何時までも元気で参画出来るような社会作り、健康作りを目指していく必要があると思っています。
長寿の要因に”多様な遺伝子の特徴”がある?
私は日本人、あるいはモンゴロイドの人たちは長生きの遺伝子を持っていると思っています。長寿の国はシンガポール、台湾、韓国など東アジア地域は長寿の国になりつつある。その背景にはモンゴロイドが持つ遺伝学的な強さがあると思っています。
モンゴロイドの特徴は、暑いところでも寒いところでも生きていける強さを持っている。コーカソイドの特徴、放射線に弱く紫外線が強い地域では皮膚癌になるなど生きていけない。白人の人たちは、紫外線が強い地域では皮膚癌になったりしてなかなか生きていけません。一方黒人の人たちは、紫外線が少ないところにいると、ビタミンDを作る皮膚の力が弱いので、皮膚は黒いほどビタミンDを産生する能力が低いんです。
なので、緯度の高いところで黒人が生きていくのはなかなか難しい。モンゴロイドである日本人は、紫外線が少なくなれば色は白くなるし、紫外線が多くなれば色は黒くなる。調整が出来るんですね。それを含めていろんなところで生きていける。それから、モンゴロイドは身体が小さい、引け目に感じる人が多いかも知れませんが、医学的には凄く徳なんです。
長生きの一つの要因になっています。それも含めて日本人やモンゴロイドの人たちは長生きの遺伝子を持っている。その中でも日本人は『弥生系』と『縄文系』がいる。大陸から朝鮮半島を介して渡ってきた人と、北から大陸北部から北海道を経て本島へ入ってきた人たちと、南から黒潮に乗って日本に入ってきた人たち、いろんな人たちが混じり合って多様な遺伝子を持っている。だから、環境の変化にも非常に強い。
身長が高いと癌のリスクが高まる?
身体が大きいと細胞の数が増える、身長が高いと癌のリスクが高まる。身体を大きいとどうしても細胞の数が増えますよね。細胞というのは絶えず分裂して新しく入れ替わって、そこの過程の中で一定の割合でがん細胞が生まれてきてしまうんですね。そうすると、細胞の数が多ければ多いほど癌細胞が生まれてくる数が多くなるんです。そうなると癌になりやすいということになるんです。
大体10㎝身長が高くなると、10%癌のリスクが高くなるという研究結果が出ているんです。それから身体が小さいと、安静時の代謝が減って酸化ストレスも少なく、動脈硬化になりにくい。身体のサイズが違っても、内臓のサイズはそんなに違わないので、身体が大きい人は内臓に対して凄く負担がかかっているというようなことも言われています。
生活習慣病『肥満』の日本における現状は?
日本は先進国の中では圧倒的に肥満が少ないです。大体国民一人当たりGDPが1万ドルを超えるあたりで肥満の割合が増えるんですが、後は一直線でほぼ並行です。
肥満者の割合、これはBMIが30以上の人たちが20~30%の間です。日本人はBMIが30を越えている人は4%くらいです。圧倒的に少ない。韓国やシンガポールも少ないですが、アメリカは国民の33%位が肥満です。国民の3人に1人が肥満。
これは日本人が圧倒的に砂糖や油を摂らないということです。世界的なレベルから見たら、圧倒的に少ないんです。砂糖も脂肪も日本人は本当に摂ってないんです、だから痩せているんです。それは遺伝的な要因があるかも知れないし、色んな要因があるかも知れないんですが、圧倒的に砂糖と脂肪です。日本人の今の摂取量が世界の理想です。そして砂糖も油もあまり使わないのが『和食』なんです。
和食というのは色んな優れた面がありますが、その中の一番はバランスが良いということです。一汁三菜という言葉がありますが、主食(ご飯)があって主菜(肉や魚)に副菜、汁物がある。和定食はバランスを取るのに非常に良い。
一般的に世界の国々ではワンプレートで来たりすること多い、そうするとバランスが非常に取りにくいんで、種類ごとに分けてあげると、肉体労働でエネルギーが沢山必要という人にはご飯の量を増やしてあげるとか、育ち盛りの子供には主菜(肉や魚)を増やしてあげる、野菜が足りない人には副菜を増やしてあげる、お味噌汁で発酵食品としての味噌とか、海藻だとか、そういうものを摂って身体を整える、そういうことが非常にやりやすいんですね。
そういった意味でエネルギーや栄養素の調整が、個人のライフスタイルやライフステージに合わせて上手く調整出来る、こういう食事のパターンは世界で他にはありません。
主食の米は流行の糖質ダイエットで敬遠されがちだが?
和食の特徴の一つが、お米と魚、洋食ではあまり摂らない、肉と小麦が中心の洋食とはちょっと対極をなすようなものですけど、お米というのは非常に健康的なんです。お米の主成分はβデンプンで、白くて硬い、そのままでは消化しにくい、水につけて炊くという過程で、柔らかく美味しいαデンプンに変わるんです。透明感があって非常に美味しい、消化に良い、栄養素としても吸収される。お米は炭水化物だけと思っている人はいるかも知れませんが、タンパク質も一杯含まれています。
お米のタンパク質は非常にバランスが良いんです。小麦と違ってアミノ酸のバランスに優れている。アミノ酸の中に『ヒスチジン』があって、食欲を抑える作用があります。食べ過ぎないという作用。ヒスチジンは脳の中に入って、食欲を抑える中枢に作用するが、この作用を抑えるのが『プロリン』というアミノ酸で食欲増やす。そうすると、ヒスチジンが沢山入ってプロリンが少ない食材は太りにくい。
どういうものかというと、圧倒的に魚です。魚を食べると太らない、痩せますよ、植物性のタンパク質の中で唯一の例外がお米なんです。お米は食べ過ぎないように自動的にブレーキがかかるが、小麦はそれがない。そういう意味で和食を食べると、肥満が少ないという効果、脂肪を分解する効果もあります。