新型コロナウイルス

PCR検査場の不正手口 検査数水増し結果も捏造

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コロナ無料検査の不正「当たり前」 公金食い物に…内部関係者が明かす水増しの実態

 
 

 

新型コロナウイルスの無料検査事業を巡る補助金の不正申請が、各地で相次いで発覚している。コロナ禍という国家的危機に支出された多額の公金が、一部の悪質事業者によって食い物にされた形だ。「検査件数の水増しなんて当たり前のことだった」。過去の検査事業で億単位の補助金を受け取ったとされる大阪府の委託先の内部関係者が、産経新聞の取材に実態を明かした。

コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行する直前の今年春ごろまで約2年間、大阪府内の検査業者の傘下に入る形で無料検査場を運営していた男性。無料のPCR検査と抗原検査を受けに「1日当たり数十人がやって来た」と振り返る。

無料PCR検査では、採取した受検者の唾液を「検査ラボ」と呼ばれる専用施設へ送付。施設の装置を使って陽性か陰性かを判断して、「最短2日で受検者のメールアドレスに結果を通知する仕組み」だった。

この中で起きる典型的な不正が、「PCR検査しか受けていない人が、同時に抗原検査を受けたと偽って検査件数を水増し」し、補助金を申請する手口だ。男性は「自分の検査場では、ほぼなかった」としながらも、同じ事業者の別の検査場では「不正は珍しいことではなかった」と打ち明ける。

検査結果を捏造

抗原検査は一般的に、鼻の奥の粘液を綿棒で取ってウイルスのタンパク質を検出し、その場で15分程度待てば結果が判明する。PCR検査で採取する唾液とは異なり、検査ラボに送ることなく検体は廃棄。検査申込書は府側に提出する必要がなく、1週間ごとに件数のみを報告していた。

男性によると、こうした仕組みの悪用は絶えなかったとし、「抗原検査の申込書にPCR検査を受けた人の名前や住所などを勝手に書き込み、PCR検査の結果に合わせた架空の抗原検査結果を府側に報告していた」。実際、府の担当者も「PCRに比べ、抗原検査は水増しの痕跡が残りにくい」と明かす。

府側は不正に関する情報が寄せられた事業者に対し、抗原検査の申込書を提出するよう求めた。すると事業者側は筆跡などから申込書の偽造が発覚するのを恐れ、「手書きの申込書の情報をパソコンで入力し、申込書を作り直して提出していた」という。

 

筆跡による不正発覚を懸念した業者側が検査場の担当者に送ったLINEの文面(一部画像処理しています)

筆跡による不正発覚を懸念した業者側が検査場の担当者に送ったLINEの文面(一部画像処理しています)

また、検査不正に詳しい別の関係者は「(ある検査業者が)保険代理店から入手した保険契約者の名簿から、協力してくれそうな契約者を物色し、『陽性』のPCR検査結果を捏造(ねつぞう)して保険金をだまし取っていた」とも明かす。

刑事告訴も検討

大阪府は昨秋、検査場の従業員らから複数の情報提供を受け、無料検査事業を受託する370事業者のうち15事業者の立ち入り調査を実施。6月5日、補助金の不正申請が7事業者で確認されたと明らかにし、補助金42億円余りを不交付、約11億円の返還を求めることを決めた。吉村洋文知事は報道陣の取材に「厳しく対応する」と述べ、悪質なケースについては刑事告訴も検討するとしている。

不正申請は全国で相次いで発覚しており、東京都も6月2日、11事業者が都に総額約183億円の補助金を不正に請求していたと発表。同19日には、埼玉県の無料検査事業で抗原検査を実施したように装い、補助金約100万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で30代の男ら2人が逮捕された。男の関係先からは、この約1年間で7千万円以上の請求があったとされる。

 

こうした状況に元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「感染拡大を抑えるため、不正防止は二の次で検査事業を急いだという行政側の事情に付け込んだ悪質な手口だ」と指摘。行政側に対し、「甘い汁を吸った事業者を今後も徹底して調べ上げ、不正額が大きければ刑事告訴するなど、捜査機関と連携して厳しく対処すべきだ」としている。(岡嶋大城、山本考志)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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