新型コロナウイルス

イベルメクチンが慢性腎臓病の進行を抑制

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
慢性腎臓病CKDは日本国内に1,330万人(成人の8人に1人)いるとされ、新たな国民病と言われています(日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012)。いつの間にこんなに増えたのかと驚きますね。かつて人工透析は他に方法がない人に、移植を除き最後の選択肢とされていました。従って透析患者の寿命は短いもので、日帰りや夜間で透析が出来るようになった現在でもこの傾向は変わりません。平均的な透析治療後の余命(寿命)は、1年経過では88%ほどで急激に生存率が下がることはありません。 しかし5年経過だと約60%と半減してしまい、10年経過では35%まで低下してしまいます。
 
 
 
@fseiichizb4
 
千葉大学 イベルメクチンが慢性腎臓病の進行を抑制することを発見 コメ: これは凄い発見だ。 腎臓のろ過システムは、血液→糸球体基底膜→ポドサイト(糸球体上皮細胞)→原尿→おしっこができる。 イベルメクチンはインポーチンに結合しその働きを阻害。これによりデンドリンというタンパクがポドサイト核に入れなくなるため慢性腎臓病の進行を抑制する prtimes.jp/main/html/rd/p

Image

【プレスリリース】腎臓病進行を抑制する方法を発見 糸球体に現れるデンドリンの核移行抑制が腎臓病進行を遅らせる

千葉大学大学院医学研究院 淺沼克彦 教授、大学院医学薬学府の博士後期課程大学院生Maulana A. Empitu (研究開始当時)らの研究グループは、腎臓の糸球体足細胞に発現するデンドリンという蛋白質の細胞核への移動を抑制することが、慢性腎臓病の進行を遅らせることを発見しました。

この成果は、慢性腎臓病の進行を抑制する治療薬の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、科学誌「アメリカ腎臓学会誌(Journal of the American Society of Nephrology)」にて2023年5月3日オンライン公開されました。

■ 研究の背景

腎機能が徐々に悪化していく病気を慢性腎臓病といいますが、日本の慢性腎臓病患者数は成人人口の約13%(1330万人)で8人に1人が慢性腎臓病ということになります。慢性腎臓病が進行すると血液透析が必要となりますが、現在34万人以上と多くの透析患者がいます。慢性腎臓病の進行には蛋白尿が深く関わっていることが知られており、蛋白尿発症のメカニズムを解明することが慢性腎臓病治療薬開発につながります。

腎臓は血液を濾過して体内で産生された老廃物を捨てる臓器です。腎臓の中で、糸球体注1)という毛細血管の塊で血液を濾過して尿を作っていますが、その毛細血管を外側から支えている糸球体足細胞(以下、ポドサイト注2))は、血清蛋白が尿中に漏れ出ないための最終バリアとして機能する重要な細胞です。つまり、ポドサイトが傷害を受けると蛋白尿が出現し、その障害が持続するとポドサイトは尿中に脱落し慢性腎臓病が進行し、最終的には血液透析という、腎臓の代わりに機械で老廃物を捨てる方法をとる必要が出てきてしまいます(図1)。

ポドサイト障害という現象は様々な腎疾患で認められる共通現象であり、ポドサイト障害を抑制することは慢性腎臓病治療につながることが考えられます。研究グループは以前の研究で、デンドリンという蛋白質がポドサイトにのみ発現していることを発見し、ポドサイトが傷害を受けると、デンドリンがポドサイトの核へと移動し、蛋白尿の増加など腎障害を促進することを見つけていました(Asanuma et. al. Proc Natl Acad Sci USA. 104. 10134-10139. 2007) 。そこで、デンドリンの核への移動の分子メカニズムを解明し、その核への移動を抑制する方法を見つけることができれば、慢性腎臓病の進行を抑えることができるのではと考えて研究を行いました。

■ 研究の結果

以下の1~3の結果より、デンドリンの核への移動の分子メカニズムが判明し、核への移動を抑制する薬剤を投与するとポドサイト障害は抑制され、蛋白尿の減少だけではなくポドサイトの尿への脱落も減少し、腎障害が軽減されることがわかりました。

1.デンドリンを発現しない(デンドリンノックアウト)マウスは、デンドリンを発現するマウスに比べて、慢性腎臓病を引き起こした際の蛋白尿や慢性腎臓病の進行スピードが軽減しました(図2)。

2.デンドリンは、インポーチン注3)と結合することにより、核へと輸送されることが判明しました。さらに、インポーチンの核への移動を阻害する物質(イベルメクチン注4))は、デンドリンの核への移動も抑制することが分かりました(図3)。

3.慢性腎臓病を引き起こしたマウスに、イベルメクチンを投与すると、蛋白尿とポドサイトの脱落が減少し腎障害が軽減しました。

■ 今後の展開:慢性腎臓病の治療薬の開発に向けて

本研究では、デンドリンの核への移動を抑制すると蛋白尿と腎障害が軽減することがわかりました。デンドリンの核への移動を直接阻害する物質を見つけることが慢性腎臓病の新たな治療薬となると考えられます。

■ 用語解説

注1) 糸球体:腎臓で血液を濾過して尿を作る際に血液を濾過する部分を糸球体と言います。毛細血管の毛糸玉のような構造をしているので糸球体と名付けられました(図4)。

注2)  糸球体足細胞(ポドサイト):腎臓における血液の濾過は、腎臓に存在する糸球体と呼ばれる場所で行われています。腎臓にある血管は枝分かれをくり返し、やがて毛細血管となってそれぞれが糸球体に入ります。糸球体の中では毛細血管から血液の成分が濾過されて尿が作られます。この時、血液中の蛋白が漏れ出さないように、毛細血管の表面を覆っている細胞がポドサイトです。

ポドサイトの数が減少すると血液中の蛋白が漏れだして蛋白尿が出ます。ポドサイト障害が持続すると、やがて糸球体そのものが壊れて、血液の濾過が十分に行えなくなり、腎機能が低下します。

注3)  インポーチン:特定のアミノ酸配列を持つ蛋白質と結合し、細胞の核へその蛋白を運ぶ役割を担っています。

注4) イベルメクチン:寄生虫やダニ感染症の治療に使用される医薬品であり、COVID-19の治療効果についても話題になりました。長期投与できるのかどうかについては検討されておらず、現時点では慢性腎臓病に効果があるとは言えません。

■ 論文情報

論文タイトル:Inhibition of importin-α-mediated nuclear localization of dendrin attenuate podocyte loss and glomerulosclerosis.

著者:Maulana A. Empitu, Mitsuhiro Kikyo, Naritoshi Shirata, Hiroyuki Yamada, Shin-Ichi Makino , Ika N. Kadariswantiningsih, Masashi Aizawa, Jaakko Patrakka, Katsuhiko Nishimori, Katsuhiko Asanuma

雑誌名Journal of the American Society of Nephrology

DOI:10.1681/ASN.0000000000000150

■ 研究資金について

本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)(18H02823) (23H02923)などの支援を受けて行われました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

two × four =