日本では健康診断を受ける機会が多いですが、BMIや血圧が高いから、と薬を出そうとする医者が多いことには辟易します。健診の医者はほとんどがなりたての若い医者が多いですが、少し違う意見を言うと黙ってしまう者ばかりです。今行われている健康診断が本当に健康の役に立っているのかどうかは、かなり疑わしいと思います。検診で薬を出されても、真に受けてしまう前にかかりつけ医などに聞いた方が良いと思います。
・医療費削減が目的だったのに6千億から1兆1千億へ増えてしまった
・無駄な医療と無駄な薬で、そのために副作用が起こる
・健診の科学的根拠がない、死亡率低下、健康向上のエビデンスがない、偽陽性が多くなる
・子宮頸がん、乳がん検診を20代で受けて切除してもまた再発する
・乳房全摘でも温存療法でも5年生存率は変わりない
・病気を見つけて薬を売りつけるための道具
健康診断・人間ドック、医者が言わない「検査の基準値」ウソ・ホント、“正しい検査”なんてほとんどない!?
健康診断や人間ドックで悪い数値が出てしまったら……。でもそれはどんな理由によって何が悪いのか。そもそも『基準値』とはなんなのか。新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦氏に話を聞いた。
『基準値』がかかえる問題
「基準値とは何かというと、例えば“健康”な男女を大勢集めて、基準値の調査としてある検査をしたとします。年代や性別で分けたとしても被験者の中には、必ず飛び抜けた数値となる人が出てきます。異常に数値が高かったり、その逆も。
健康で病気ではないけど体質的に異常というケースです。そのような数値で上2・5%、下2・5%の人をカットする。その合計が5%。基準値とは、“健康と思われる人の検査値の上下計5%を除外した95%が入る値”です」(岡田医師、以下同)
この算出法は国際的に定められたもので、海外も同様。
「本人も自覚症状などはない、検査をしても異常がない、重大な病歴もない、特別な薬も飲んでいないなど条件を定めて残った、“一応健康と思われる集団”から95%の範囲を求めます」
しかし、限定した“健康らしい”集団にも問題が。
「健康診断では、コレステロールや血圧といった、高い数値を放っておくと“将来”病気になる可能性が高いという検査が多い。このような検査であれば、その人たちの将来の“健康状態”も調査するべきなのです」
追跡して数値を追うことで、より正しい基準がわかる。
「追跡調査で、当時のこの値は正しかった、もしくは修正が必要だったと調整できる。それで初めて信頼できる基準となる。いくつかの検査はこのような調査をもとに基準値が求められています」
極端に言うと“今”という一点だけを測定した基準による検査を受けた人たちは“その時点”では基準内で健康だったかもしれないが、もしかしたら10年後多くの人が不調かもしれない……。
「ただ、その調査は簡単ではない。時間、お金、手間、高度な知識が必要となります。ここまで調査して定められた基準値は、実はほとんどありません。未来のことは考慮せず、現在の数値のみで基準値が定義されています」
信用すべき基準値、そうではない数値
健康診断・人間ドックを受けると検査結果を受け取る。そこには“基準値内”や“異常なし”、“要精密検査”などが記されている。
「そのような検査で出る数値の多くは、ここまで説明した方法で簡便に求められたものです」
以下は健康診断で検査される“メジャー”なものに絞って解説する。まずは身長と体重から測定できるBMI(肥満度を表す体格指数)だ。健康だけでなく、“見た目”にも直結するので、気にする人も多いだろう。
「BMIと死亡率の関係性を、10年間、追跡調査したアメリカのデータがあります。まさに理想的な基準値を求めたもので、大変まれな調査の1つ。ざっくり言うと、BMIが高すぎると死亡率は上がり、また逆に低すぎても死亡率が上がっている。注目は、日本のメタボ健診(特定健康診査)ではBMI値は25を超えると肥満としている点です」
アメリカのデータを見ると、いちばん死亡率が低かったBMI値は24。日本におけるメタボ基準である25、そこから27程度までは、死亡率は多少、上がっているものの、“急激”に上がるのはデータによれば28からとなっている。
「日本の基準値は、厳格なデータに基づいていない。これはあくまでBMIだけで死亡率を考えたものですが、私は患者さんには26程度まででしたら、“ほかに病気がなければ無理に痩せることはないですよ”と言っています。BMIは身長と体重の数値だけで簡単にわかるし、しっかりした将来を考慮した研究データもあり、無視してはいけない大事な数値になりますね。上がっているなら放っておいてはいけない」
体脂肪や腹囲という指標もある。
「体脂肪は正確に測るのが難しく、腹囲のほうが大事といわれています。しかし、腹囲の数値と死亡率との関連性を調べたところ、BMIのような“いくつくらいから死亡率が上がる”というグラフにならない。バラバラで、腹囲が大きいからダメだというデータにならないのです。つまり将来の健康状態には関係ないということです」
次に血圧について。
基準値を超えた結果、必要ない薬を出されている人も
「私自身、健康な2500人の検査データを集めてさまざまな分析をしました。そのうちの1つが血圧。メタボ健診において、国が定めた基準値で最高血圧が130以上、または最低血圧が85以上はリスクあり。
この“基準”を私が集めたデータに当てはめると、51%もの人が該当してしまいます。メタボ健診を受けた2人に1人が“異常”となる。健康と思われる人を集めてこんなに多くの人が“異常”となるなんて考えられますか?」
異常の結果は薬の処方だ。
「血圧の薬を飲んでいる人は、年齢が上がるほどその割合は高くなり、60代は3人に1人程度、70歳以上になれば2人に1人程度が服用しています。判定基準がそうだから。血圧に関して、死亡率との関係を追跡調査した研究はあるにはありますが、BMIのように“この数値から将来的に健康被害を及ぼす可能性が高い”というような明確なデータがない」
とはいえ、将来起こりうる病気に関連する“基準”を示した研究はほかにもある。
「血糖値です。死亡率との関係を調べた人はまだいないのですが、わかりやすいのが目の障害との関係です。空腹時の血糖値が高い人ほど、最悪の場合、失明に至る網膜症の発生率が上がる。
このデータの信頼性は、別の国の複数の集団で調査したデータがほとんど同じだった点にあります。グループ同士互いに無関係。結論は、空腹時の血糖値が99〜108を超えたあたりで、どの調査も網膜症の発生率が上がっている。これが、いま世界的に基準値として使われています」
ここまで述べてきたような、基準値を超えたら怖い数値もあるが、それほど心配するほどでもない“異常値”もある。
「例外もありますが、ガンマGTPが高い人のほとんどがたくさんお酒を飲む人です。これがかなり高いと肝機能障害などと診断され、病院によっては薬が出されます。しかし、お酒を控えれば基本的に下がります。尿酸値も同様です。
日本は健康診断が盛んですから基準値を超えて薬を出されている人が多い。例えば尿酸値が高いと言われた人は主治医と相談して、本当に薬が必要か、生活習慣の改善ではダメかと聞いてほしい」
自覚症状が出ているようなマズい状況は別だが、そのようなケース以外の多くの検査値の異常は自分の努力、生活習慣を改めることでかなり改善されることが多いという。
「薬には必ず副作用があります。検査値に振り回されず、薬を飲む前に相談してほしいですね。質問に答えてくれないような医師ならほかの病院へ行くべきです」