緊急事態宣言と並んで『まん延等防止重点措置』通称:まんぼうに対する効果の測定が行われていません。感染が拡大したことに対して行われたものですが、実施した結果、国内感染者数が減少したというデータは示されておらず、一体何だったのだろうという疑念が湧いてきます。本当に効果があるのなら、実施した直後に、またはしばらく経って感染者数が減少に転じなければならないはずです。しかし、何処を見てもそのようなデータは見つかりません。
wikipediaで見つかったのはこれだけ:
まん延防止等重点措置の効果
宣言又は措置の効果をめぐり、効果の有無について議論が分かれている[58]。真っ先に発令された大阪府では、発令当初の感染者は600人前後だったものの、効果が出るとされていた2週間後には、1000人を超えるような感染者を招いたことなどから、国会などでは効果を疑問視する意見が出た[58]。ただ、一方でまん延防止等重点措置の効果があったことから、1000人程度の感染で抑えることができたという意見もある[225][要文献特定詳細情報]。 2021年4月の大阪府では重点措置と宣言、どちらも感染者数の減少に対する効果が確認できたが、東京都では宣言のあとに感染拡大のスピードが下がる傾向があったものの、効果を明確には確認できなかった。大阪府では医療ひっ迫が起き、その情報も伝わったことで人出が減少し感染が下がったと考えられる[226]。
ここで『まん延防止等重点措置の効果があったことから、1000人程度の感染で抑えることができた』というのは酷いこじつけで、希望的観測が入りすぎています。岸田首相が『ワクチン接種したから感染しても重症化せずに済んだ』と言うのと変わりありません。本人の主観でしかない上に、それはデータでもエビデンスでもないからです。オミクロンは接種しようがしまいが、軽症に経過することが世界中で認められています。
もう今では実施されなくなっていますが、政府や知事は効果が無いことを悟ったのでしょうか。国民に多大な行動制限を課し、外出抑制、県をまたいでの移動を自粛せよ、〇人以上での会食、あつまりを自粛せよ、夜7時以降とか8時以降の飲食店営業時間自粛、・・・とにかく沢山ありました。国や知事が発出する宣言に国民が踊らされたわけですが、少なくともこの措置に効果があったのかどうかの政策評価を、国民は求めるべきだと思います。
東京新聞 2023年1月6日 06時00分
<コロナ8つの波〜あれはどうなった?〜第4波>
2020年1月に始まった日本での新型コロナウイルス感染流行。まもなく丸3年というこのコロナ禍は、現在を含め大きく8つの感染大流行期、すなわち「波」となって日本社会を襲い、人命や健康を損なわせ、生活や人々の意識を大きく変えた。それぞれの波を振り返り、当時騒がれたことの実相と今に残る課題を探ってみた。(文中敬称略、中沢佳子)
第4波 2021年4〜6月。全国の感染者数ピークは5月8日の7244人。感染力の強い変異株が急速に広がり、高齢者施設や大学などで集団感染が発生。重点措置の適用が取り沙汰された。4月5日に宮城、大阪、兵庫の3府県で初適用。12日には東京、京都、沖縄の3都府県に広げたが、感染拡大は止まらなかった。
◆「東京五輪を控えた、政府のパフォーマンスでは?」
重点措置の効果もむなしく、3回目の緊急事態宣言が出たゴールデンウイーク初日、多くの人が行き交う原宿・竹下通り=2021年4月、東京都渋谷区
「何の意味があるのかと思いながら、耐えてきた」。首都圏や関西でレストランや居酒屋、カフェなど十数店舗を展開する50代の男性社長がため息をつく。
緊急事態宣言の手前の対策として、2021年2月施行の改正特別措置法で新設された「まん延防止等重点措置」。男性は苦々しげに語る。「緊急事態宣言とさして変わらない。期間中、居酒屋やレストランは売り上げが5割減った」
重点措置は政府が都道府県単位で地域を決め、知事が市区町村単位で範囲を絞る。緊急事態宣言のように休業要請はできないが、営業時間の短縮が要請できる。店側が正当な理由なく応じないと命令が出され、拒むと過料が科される。
東京都では21年4月に1回目の重点措置となり、飲食店に営業時間の短縮を要請。緊急事態宣言では認めなかった酒類の提供については、感染対策を取った上で、午後7時までなら容認した。しかし男性は「まさに飲み始めようという時間。居酒屋にとって営業できないのと同じだ」と腹立たしさが収まらない。
閉店に追い込まれ、何億円もの損失を出した経営者もいる。「店の延命のために借金を抱えた人は珍しくないし、破産した人もいる。飲食業界の人間は、集団訴訟をしてもいいと思い詰めるほど、国に大損失を背負わされた」。感染源は飲食店と言わんばかりの対策にも、男性は懐疑的だ。「飲食店要因説は本当なのか。重点措置の効果も分析されていない。(同年7月開幕の)東京五輪を控えた、政府のパフォーマンスじゃないのか」
◆大阪では「見回り隊」つくり営業監視
2021年4月、飲食店に立ち入り、コロナ対策のチェック項目を確認する都職員㊨=東京都新宿区
都心部で中華やイタリア料理店を営む60代の男性も「営業時間も酒の提供も縛るルールの中で営業しても、客足の動向が読めず、仕入れも定まらない。鮮魚を扱う店は特に難しい」。時短営業要請に対する協力金も、大勢の従業員を抱え、都心の立地で多店舗展開する経営者にとっては焼け石に水だという。「うちもコロナ前より売り上げが4割落ちた。先行きが見えない中で、月500万〜600万円の家賃や月400万円の社会保険料の負担は重い。つぶれるんじゃないかと不安だった」。リモートワークの浸透でオフィス街から人が消え、テイクアウトの売り上げも振るわなかった。
全国で初めて重点措置が適用された大阪府では、府と市が飲食店を監視する「見回り隊」を発足。店を訪れ、時短営業に従っているか、アクリル板設置や換気などの対策を徹底しているかをチェックした。
大阪の政治行政を取材しているジャーナリスト吉富有治が振り返る。「名称からして強権的イメージ。戦時中の隣組や国防婦人会のような監視団体にならないか不安だった」。数万軒にも上る店舗を回りきれるとも思えない。取りこぼしが出て、不公平感を招きかねないとも案じた。
当時、クラスター(感染者集団)の発生は飲食店から高齢者施設や大学に変わっていた。見回り隊に感染を食い止める効果はあったのか。吉富の疑問は晴れない。「会食で感染した人がいたのは事実だろう。しかし、割合はそう多くなく、感染経路が分からないものも多い。飲食店対策だけに人手と税金を投じるのは、効率的じゃない。高齢者施設などで予防策を講じたほうが効果があったのでは」
◆結局、五輪直前に緊急事態宣言
2021年3月、飲食店への時短営業を呼び掛ける神奈川県の黒岩祐治知事=神奈川県庁
行動制限で飲食店に打撃を与える点は緊急事態宣言と同じ。なぜ重点措置を設けたのか。
「『緊急事態宣言』という言葉は、インパクトが強過ぎる。国民はおびえて外出を自粛し、経済への影響が大きかった。コロナ対策にどれほど税金を投入しても、経済が動かないままでは立ちゆかなくなる。少しでも経済を動かすべく、重点措置という弥縫策が編み出された」。政治ジャーナリストの泉宏は、宣言発令を回避する思惑があったと指摘。それゆえ、中途半端な対策になった。「やっていることは宣言とさほど違わない。対応を変えたように見せ掛けただけだ」
泉は五輪開催にこぎ着けたい思いもあったとみる。「1年遅らせた以上、政府は何としても開きたかった。しかし、緊急事態を宣言したままで、世界に向けて開催を主張するのは難しい。何となく違う形の対策が必要だった」。結局、感染に歯止めがきかず、五輪開催直前でまたも緊急事態宣言が発令された。
◆「行動制限による感染抑制効果は明確ではない」
緊急事態宣言や重点措置の大きな目的は人流の抑制だが、そもそも感染拡大を防ぐ効果はあるのか。
「行動制限による感染抑制効果は、必ずしも明確ではない」。緊急事態宣言や重点措置の対象になった地域の人流や感染動向を分析した、ニッセイ基礎研究所経済調査部長の斎藤太郎がきっぱり言う。「対象地域では、対象外の地域より人出は減った。しかし、人口10万人当たりの新規陽性者数は対象外の地域より多く、ピークアウトの時期もさほど差がない」
行動抑制は外食や宿泊など対面型サービスの消費の減少に直結。とりわけ外食産業は発令期間が長いほど、より顕著に落ち込んだ。「重点措置には『宣言ほど深刻ではない』というメッセージ性がある。多少なりとも経済を回そうという思いもうかがえる。しかし、感染を抑える効果は低いのに、消費に大打撃を与えた。政府はその検証もしていない」と斎藤は批判。新型コロナと共存する「ウィズコロナ」を前提にした対策を促す。「まず医療体制を見直し、インフルエンザと同じように診断治療できるようにする。そうすれば、医療逼迫を防ぐための行動制限の必要性も薄れる」
◆「伝家の宝刀」乱発の末に
重点措置の元々の狙いについて、日本大教授(危機管理学)の福田充は「緊急事態宣言は、いわば伝家の宝刀。政府も当初は発令をためらったほど強力な対策だ。一方、重点措置は強い対策を出す前のアラートの意味がある。徐々に危機感を引き上げる、段階的説得コミュニケーションだ」と説明する。
「伝家の宝刀」が何度も抜かれれば、慣れる。宣言の効力を保つには、前段階の重点措置の効果的な運用が問われると、福田はかねて訴えていた。だが、実態はどうだったか。
2021年5月、記者会見で休業要請への理解を求める東京都の小池百合子知事=東京都庁
21年の東京都の動きをたどると、4月中旬に最初の重点措置が始まったが、2週間後、大型連休を控えて3度目の緊急事態宣言が発令された。6月に解除され、重点措置に戻ったものの、約3週間後、五輪を目前に4度目の宣言が出た。「重点措置は本来、非日常的なもの。常態化すると、おおかみ少年効果で警告の意義が薄れる」と福田。結局、重点措置は意義も効果も不明確なまま、22年3月まで繰り返された。
感染第8波の今、福田はくぎを刺す。「政府は責任から逃げ続けた。ウィズコロナで社会活動を止めないとはっきり打ち出した上で対応を議論し、出口戦略の政治決断をしなくては。なのに同調圧力でマスク着用や3密回避を促す『空気の支配』でしのいでいる。重点措置の運用の検証もしていない。これでは危機管理とは言えない」
◆デスクメモ
まん延防止等重点措置は導入のころ、公の場でも「まん防」と呼ばれていた。魚のマンボウを想像し、緊張感に欠けるとして公式には使われなくなり、略称は「重点措置」に移行した。でも一体何に重きを置いたんだか。しっくりこない呼び名にも、コロナ対策の迷走が表れている。 (北)