始まったマイナカード自主返納という一揆。制度の盲点をついた効果的な反撃で岸田政権ごと終焉へ=今市太郎
ついに始まった「マイナカードの自主返納」という国民の抵抗
マイナカードの紐付け失敗による利用現場での混乱は、日を追う毎に激しくなっています。
そしてとうとう他人が「顔認証」でも利用可能になるなど、お粗末極まりない状況まで起こりました。
本来、ここまでシステム設計が破綻しているのであれば、いったんすべて利用停止してもう一度ゼロから制度を考え直すべきでしょう。
しかしながら、バイデンの発言に聞く耳を持っても国民の声には一切聞く耳をもたなくなった岸田首相は、紙の保険証の廃止を撤回しようともせず、多くの国民が絶望的な気分に陥りはじめています。
カード自主返納は制度の盲点をついた効果的な反撃手段
このマイナカードはそもそも、自主的な判断で作成申請・利用するというのが大前提。海外に転出する場合や有効期限切れの状況では、もともと返納が求められています。
また自己都合で自主返納するという緩い規約がそのまま残っていますので、「保険証だ」「免許証だ」「利用銀行口座の紐づけだ」といった、ある意味部分的に必須の条件をいくら繰り出してみたところで、もとのカードが返納されてしまえば「はい、それまでよ」という状況で、そもそもの運用制度設計がまったくできていないのが実情です。
この盲点はメディアでもさほど紹介されているわけではありませんが、利用現場ではマイナカードの自主返納が加速しているといいます。
さしもの総務省も返納者激増という事態はまったく想定していなかったようで、どれだけの返納数が出ているのかは把握できていない様子。
返納された数すらわからない…ということをみても、このIT利用システムがかなりポンコツであることを彷彿とさせる状況です。
利害関係者以外すべての国民が返納すれば、マイナンバーも政権も終了に
マイナカードの利用をめぐっては、直接的に利益を受けることができないためなのか、本来は岸田政権を支えるはずの一部の自民党議員からもその強引な利用に批判が集まっています。
さらには連立を維持している公明党の支持母体である創価学会の会員ですら、そのすさまじい実害を我慢して利用するわけにはいかなくなっている様子。
この機能不全のカードを利用するのは、マイナカードによほど強い利害のある関係者、盲目的に政権を支える壺カルトの信者、さらにシステムの実装を請け負ったIT企業の関係者…くらいしかいないのではないかとさえ思われる段階に入っています。
これで利用国民の9割近くがカード自主返納などという動きになれば、これはまさに令和の国民的反岸田一揆。カードシステムは終焉、さらには政権も終焉に至るものと思われます。
マイナカードを巡ってそこまでするかという声も聞こえてくるところですが、この岸田政権のやり口はそれぐらいひどいもので、増税の問題などをはるかに超えて本邦での国民の社会生活継続の可否を判断する重要な問題となっていることを忘れてはなりません。
なにがあってもほとんど騒がないのが日本国民の悪い習慣ですが、さすがにマイナカードについては返上一揆を起こして政権を懲らしめてやる必要が出てきているのです。
マイナンバー「取得せかし、メリットだけ強調」悪徳商法と同じ 堤未果さんが批判
堤未果さん(京都市中京区)
個人情報の漏えいや交付ミスなどトラブルが相次ぎ、マイナンバー制度への不信感が強まっている。大事な情報を預けていて大丈夫なのか。戦争や災害などのショックに乗じて過激な政策を推し進める「政府のやりたい放題」を批判するジャーナリストの堤未果さんに、制度への向き合い方を聞いた。 【写真】堤さんの「ショック・ドクトリン」 -普及率が高まる一方、不安の声も強まってきた。
一番の問題は、急ぎすぎたこと。政府は、大切な情報を一元管理することへの認識が甘く、普及率アップを最優先に進めたため、不備の多いシステムになってしまった。 -どんな不備がある。 この制度で最も大事なことは、技術的にも法的にも個人情報がしっかり守られること。しかし、現実には入力ミスによる情報漏えいが相次いだ。
また、ひも付ける情報の範囲を健康保険証、入館証、学校の成績など、なし崩し的に広げていき、その利用範囲は国会を通さずに拡大できるようにしてしまった。 -安心して情報を預けられない。 安心できるわけがない。もしマイナンバーカードを落とし、何かの理由で4桁の暗証番号まで知られたら、第三者が情報を見ることは簡単。利用者サイト「マイナポータル」にアクセスすれば、年金額や納税額、介護レベル、飲んでいる薬の種類まで丸裸になり「なりすまし」も簡単にできてしまう。
ところがマイナポータル規約は「デジタル庁は過失以外責任を負わない」と。実質義務なのに自己責任。このシステムの大前提である国民と政府の信頼関係がない。 -問題が多いのに、政府はなぜ急ぐのか。 国民の資産把握は財務省の悲願であり、政府は国民情報を一元管理できるデジタル化を急いでいる。過去に何度も試みて反発を受けてきたが、コロナという緊急事態下で国民は、速やかな給付金の支給やワクチン接種状況の把握などに急務と思い込まされた。
ショックで思考停止すると選択肢が見えなくなる。 -いまが政策実現のチャンスだと。 まさに国民の不安に乗じた「ショック・ドクトリン」だ。この手法の特徴は二つ。まずやたらと急(せ)かすこと。そして、メリットしか言わず他の選択肢を奪うこと。つまり悪徳セールスと同じ。最大2万円のマイナポイントをばらまき、その配布期限を設けて焦らせる。
諸外国の事例もメリットばかり強調し、問題点は知らせない。健康保険証を廃止して他の選択肢を奪い、外堀を埋めるやり方もしかり。 -保険証廃止は反発が強い。 さすがに保険証に手を出されて国民は怒り出した。これだけ貧困者が増えても守ってくれる国民皆保険制度は、最後の砦(とりで)だからだ。命に関わるものが奪われそうになり、ようやく危険性に気づき始めた。
緊急事態にこそ立ち止まって考える知性が大切。カード返却が増えているのは「現制度では納得できない」という意思表示だ。政府が真摯(しんし)に向き合い、一から制度を見直す事は、利便性だけでなく民を幸福にする真のデジタル化へと舵(かじ)を切るチャンスなのだ。
つつみ・みか 国際ジャーナリスト。東京生まれ、ニューヨーク市立大国際関係論学科修士号取得。国連、米野村證券などを経て現職。京都市在住。著書に「デジタル・ファシズム」(NHK新書)、「堤未果のショック・ドクトリン」(幻冬舎新書)など。