都内で、性感染症の「梅毒」の感染報告数が急増している。東京都は、来月、無料検査所を開設すると発表した。自分の素性を明かさずに、「匿名」で検査を受けることが可能だという。
都内で過去最多 女性40倍に
17日午後2時から行われた東京都・小池知事の定例会見。いつもならば、新型コロナウイルス対策や、節電に向けた呼びかけなどが続くが、この日は違った。「最近、問題となっているのが梅毒。都内の感染報告数が急増している」という。
梅毒の感染報告数は、全国で増えているのだが、特に、都内の感染状況は深刻のようだ。去年1年間の感染報告数は3677件で、1999年の調査開始以来、最多となった。2016年~2020年は1700件前後で推移していた。去年は、その2倍強にのぼったことになる。
男女別に見ると、男性が2291件、女性が1386件。10年前の報告数と比較すると、男性がおよそ9倍(2012年263件)だったのに対して、女性はおよそ40倍(2012年34件)にのぼったといいう。女性の感染報告の急増が目立つ訳だが、多くは20代が占めているという。
SNSでの”出会い”背景か
梅毒は、性行為により粘膜や皮膚の小さな傷から感染するとされる。ほとんど症状がなく経過するため、気づかないまま病気が進行し、気づかないまま他人に感染させていくとのこと。そして、感染後およそ1か月で、発疹やしこりなどができるという。
特に、妊娠している人が梅毒に感染すると、母親だけでなく胎盤を通じて胎児にも感染する恐れがあり、非常に危険とされている。
戦後間もない頃は、国内の患者数が20万人以上にのぼっていたが、抗菌薬の開発により減少。近年の増加傾向には、SNSやマッチングアプリで知り合った不特定多数との性行為が背景にあるとされている。
全国の感染報告数も、去年、現在の集計方法となってから初めて1万人を超えたという。「令和」の時代ゆえの、感染急増と言えるのかもしれない。
無料検査は「匿名」で
こうした事態を受けて東京都は、来月の4日間、無料検査所を都内4カ所に設置すると発表した。その日のうちに検査結果が分かるという。検査所の設置日は、3月3日が新宿、7日が錦糸町、11日が立川、16日が多摩センターとなっている。
このうち新宿の検査会場は女性専用だが、戸籍上の性別にはとらわれないという。検査は事前予約で、申し込む際、氏名や住所などを明らかにする必要はないとのこと。感染の経緯を考慮すると、「匿名」検査は有効と言えるだろう。
感染防止のため、厚労省や各自治体も「コンドームを正しく使うこと」を呼び掛けている。小池知事も、会見で、「一人一人が、正しい知識を持って、適切な行動を心がけることで、感染拡大を防止することができる」と訴えた。