ワクチン接種で突発性難聴。病因は不明。
ワクチン接種と突発性難聴【査読付き論文紹介】/犬房春彦(ルイ・パストゥール医学研究センター/医師・医学博士
元の論文(英語)International Journal of Infectious Diseases 113 (2021) 341–343
ワクチンで突発性難聴:症例報告3例
1.ワクチン接種で突発性難聴の論文紹介
2.突発性難聴の原因
3.難聴の原因は酸化ストレス
4.酸化ストレスを低減するには
この論文はInternational Journal of Infectious Diseasesに掲載された。この雑誌のインパクトファクターは3.6で査読終了。
論文のハイライト:
ワクチン接種後に突発性難聴(SSNHL)を発症した症例がいくつか報告されている。
ワクチン接種後の突発性難聴の病因は不明である。
covid-19ワクチン接種後3日以内に突発性難聴を発症した3人の患者報告。
ウイルス感染が病因である可能性がある。
covid-19ワクチン接種後の突発性難聴の有害事象を念頭に置くべきである。
論文の題名は『コロナワクチン接種後の突発的な感音性難聴』
聴力検査のグラフですが、上の方だと小さな音でも聞こえている。音を大きくしないと聞こえないというのがグラフの下の方の線になります。
Aはアストラゼネカの初回投与後、右の突発性難聴が起こったということ。左側は17㏈ですが、赤の三角は86㏈に下がっています。
Bの症例は42才男性で、ファイザー投与後、左急性低音派難聴ということで、青の✖のところです。低音のところが下がっている症例です。
Cは18才男性で、ファイザー2回目投与後の難聴。左は13㏈なんですが、赤の三角は89㏈と非常に低くなっています。
この3例ともワクチン接種後3日以内に発症しています。そしてウイルス感染が病因の可能性があるというふうに記載されています。
※筆者注:オージオメトリによる聴力検査では、聞こえた時点の㏈を見る。㏈を大きくしないと聞こえない(ボタン押し反応が返ってこない)ほど、聴力が悪い状態で、Aの17㏈は正常範囲、86㏈は異常。
代表的な論文を並べますが、酸化ストレスが高くなることで難聴になるという論文は沢山ございます。論文の『加齢性難聴の予防における抗酸化物質の役割』は抗酸化物質を投与すると難聴が予防できますよ、という論文でした。
電顕写真を見てみますと、ブルーの正常な有毛細胞というのは非常にきれいに整列して数も沢山あります。ところが酸化ストレスや大きな音などで障害を受けると、有毛細胞はこのように乱れて数が少なくなるということで、音が聞こえなくなる。
さて、酸化ストレスは我々の身体の中でエネルギーを作ってくれているミトコンドリアから出てきます。エネルギー作る時に酸素を使うのですが、余った酸素が酸化ストレスの元になります。非常に分かりやすく説明しますと、酸化ストレスの最終物質で過酸化水素、これは洗濯用の漂白剤に使われています。そして消毒、滅菌に使われる次亜塩素酸が出てきます。この二つは元々我々の身体の中で白血球がウイルスや細菌を破壊する時に使うんです。
しかし、考えていただいたら分かるんですが、血液中で漂白剤成分が上がる、これは全身で炎症が上がってくるというふうに考えて下さい。
難聴と認知症・うつ病の国際シンポジウムが開かれているんですが、難聴も認知症も酸化ストレスが上昇することで発症する病気と認識されています。
難聴を避けるには酸化ストレスを下げる事が重要です。炎症を起こしたり酸化ストレスが上昇することをともかく避けて下さい。そして禁煙、大量に酒を飲まない、肥満、糖尿病のある方は糖質制限をするのも有効です。十分な睡眠を取り、精神的ストレスを下げるのも有効です。またエビデンスのある抗酸化サプリメントの摂取も有効だと考えています。
抗酸化配合剤の無償供与を行っています。
筆者は以前、内リンパ水腫、メニエール、睡眠時無呼吸を発症したときに左低音域難聴になったことがあります。その時は何が原因なのかさえ分からず困り果てましたが、医療によらずきれいに治りました。酸化ストレスなるものが、これら病態にどのような影響を及ぼしているのか。今ひとつはっきりしていませんが、元の論文の中で出てくるブレドニゾロンを大量にもらってきましたが、効果はありませんでした。症状は同じでも、それは原因によって対処も異なるもののように思います。