この記事は、自然と共に生きるとはどういうことかを示唆してくれています。本来、人は薬やワクチンと共に生きてきたのではなく、病気になったら自分の免疫力で回復し、健康を維持してきたのだと。今までそうしてきたのだから、自分の免疫力で立ち向かえないウイルスなどは、あり得ないということでしょうか。やるべきことは自分軸を持つこと。
医師からの警告…これからの感染対策、じつは「マスク」と「ワクチン」だけで安心する人が「やってはいけない」こと
写真:iStock
栃木に暮らす医師・本間真二郎さんは、「自然に沿った暮らし方が、すべての病気を遠ざける」という考えの自然派医師です。 【漫画】「南海トラフ巨大地震」が起きたら…そのとき目にする「ヤバすぎる惨状」 「100の理論より、ひとつの実践」を信条とする本間医師は、2023年春、新たな暮らし方を始めました。「できる限り、人まかせにしない暮らし方」を追求し、食べ物、水、電気なども自給する暮らしへ踏み出したのです。 「どのような生活が自然に沿っているかは、腸内細菌や微生物によいかどうか、これらにダメージを与えないかどうかで判断すればいいのです」という本間医師。それは、新型コロナの収束後、より鮮明になったマスクや、ワクチンよりも大切なことです。その重要性を『病気を遠ざける暮らし方』のなかで熱く説く本間医師の考え方を著しました。
「人はなぜ病気になるのか」という長年の疑問
本間医師が勤務する、那須烏山市国民健康保険七合診療所
私は今、栃木県の那須烏山市で、『那須烏山市国民健康保険七合診療所』の医師として勤務しています。もともとの専門は小児科になりますが、現在は市の診療所のため、外科以外のあらゆる病気を診ています。小さなお子さんからお年を召した方まで、日々たくさんの患者さんが全国から来院されています。 かつては、札幌の大学病院や、北海道の各地の病院で小児科医として働き、ノロウイルスなどの研究のため、アメリカの国立衛生研究所に留学したこともあるウイルス学、ワクチン学の研究者でもありました。
しかし、2009年からはこの栃木の地に移住して、農的な生活をしながら暮らしています。栃木の県内でも茨城県寄りの烏山一帯は、自然豊かで冬場の雪は少なく、四季を通じてとても過ごしやすい土地になります。 移住した理由は、いくつかありますが、いちばん大きな理由は、それまで「医師として漠然と抱いていた疑問」を解決するためには、専門の「医」だけではなく、もっと根本的なところから総合的に考える必要があると思ったからです。
すなわち、「医」の前に「食」があり、「食」の前に「農」があり、「農」の前に「微生物」があるということになります。これらをトータルに考えなければ、「人がなぜ病気になるのか」「どうしたら健康でいられるか」の、本当の意味が見えてこないと気づいたのです。 まだ新型コロナウイルスの世界的な流行がおこる以前でしたが、「医師として漠然と抱いていた疑問」とは、次のようなことです。
たとえば、外来で診察をしていると小児科にかかる患者さんは、いわゆる「風邪」の症状がいちばん多いのですが、それらはほぼウイルスによる感染症です。新型コロナを経験したことで理解された方も多いと思いますが、ウイルスに効く薬はありません。 医師が「風邪に効く」と言って処方する薬も、風邪自体に効いているのではなく、熱やせき、鼻水など、風邪にともなう諸症状をおさえるためのものなのです。
そうして薬によって症状をおさえているうちに、結局は患者さん自身の自然治癒力が、風邪を治していくのです。 ここでの風邪という言葉を「インフルエンザ」や「新型コロナ」など、ほかの感染症に置き換えても同じことになります。つまり、医師が薬を出さなくても、自分の力が健全に働いていれば、ほとんどの場合、病気は治るのです。
そのことをよりていねいに、深く掘り下げていったところ、 ・人のからだをつくり、健康に生きていくもとになるものは、日々の生活にこそある ・病気になったということは、その日々の生活が、自然からはずれているためである ・病気を治しているのは、自分の力そのものの、自然治癒力である これらのことを確信しました。
病気を遠ざける「シンプルな方法」
多くの人は、健康のために何かをしなければならないと思っています。たとえば、「病気になったら薬を飲まなくてはならない」「食事はこういうものを食べなくてはならない」「運動しなければならない」など、「〇〇しなければ……」という考えが強すぎます。病気を防ぐために根本的に行うべきことは、本当はとてもシンプルなことになります。
最大の病気予防は、特別なものを食べたり、何かを行ったりすることではありません。毎日のくり返しの生活を、「なるべく自然なものにすることにより、からだ本来の働きを高めておくこと」に尽きるのです。 つまり、日常生活をどう過ごすかで、病気になるかならないか、もしくは病気になってしまっても健康な状態に戻せるかが決まります。
そして、この自然に沿った生活をもっとも簡単に表現すれば、「腸内細菌を元気にする生活」ということになります。それは、私たちのからだは、じつは腸内にいる微生物がつかさどっているといってもよいからです。こうした微生物を育む生活こそが、病気を遠ざける暮らしの本質だったのです。 ただし、自然な暮らしに近づけることは大切ですが、「絶対にこうしなければならない」というふうには考えないほうがいいでしょう。
食事や生活に関してだけではなく、仕事や教育についても同じです。なるべく広い視野、長い目でとらえ、自分のできる範囲で、無理にならないように実践することです。つまり、楽しめることであり、継続して行うことができるように工夫することが大切なのです。
「他者軸」から「自分軸」へ
稲穂の様子を見る本間真二郎医師
いずれにしても、病気や健康の問題は、突き詰めると、「食」であり、「食」の前にある「農」の問題に行きつきます。そして「農」も、人の「健康」も、そのもっとも大切な部分を支えているのは微生物であったのです。そして、そのことを実践して、確かめるためにこの地へとやってきて15年がたちました。 さて、ここ数年、新型コロナウイルスの出現、情報化社会の加速、AI(人工知能)の登場など、急速に時代が変化しているのを実感します。
新型コロナウイルスに関しては、ウイルス学者として、多くの情報発信する場をいただき、たくさんの反響もありました。 多くの人々にとって悩ましい数年間でしたが、この期間は、これから急速に変化していく世の中を生きていくうえで、私自身も大きな学びと課題ができました。以前からそうでしたが、新型コロナウイルスの世界的な流行とそれによる社会の大きな変化により、よりはっきりとしたことがあります。
それは、私たちはあらゆるところを「人まかせ」にしすぎている、つまり、「他者軸に頼りすぎている」ということです。 たとえば、新型コロナウイルスをもらっても、「感染するのか」「発症するのか」「重症化するのか」「死亡するのか」などは、すべてウイルスという「他者」ではなく、自分の免疫力という「自己」の力により決まります。
それにもかかわらず、根本的な内なる力を高めることよりも、「人との接触を避け」「消毒をし」「マスクをし」「ワクチンを打つ」という他者軸に頼った感染対策を、私たちは2年も3年も続けてきました。こうした「他者軸」による対策は、感染を防ぐという効果が少し期待できるかもしれません。 しかし、いっぽうで私たちの免疫力や抵抗力を落としてしまうという側面があるため、すべて根本的な対策ではないのです。
その結果、マスクの着用率、ワクチンの接種率も、一時は「世界一」ともいわれてきた日本ですが、感染の拡大がその後も続いてきたことはみなさんが経験したとおりです。 くり返しますが、何かに頼ること以上にもっとも有効な対策は、感染に対するみずからの力を上げること、すなわち「自己軸」の対策なのです。 このように、今の世の中の大きな問題には、「自己軸を失っていること」「他者軸に依存しきっている」ということがあると思います。
医療に限らず、生活、政治、経済、農業、教育などのあらゆる分野でもそうなっています。 本来は人まかせにしてはいけない大切なことなのに、社会全体のあらゆるところまで人まかせにしていることが見受けられます。それが、社会のさまざまな問題を引きおこしている要因であることは間違いありません。
自然に沿った暮らしで見えてくるもの
私がこれまでの活動で一貫して伝えてきたことは「自然に沿った生活をしましょう」ということです。私自身も仲間とお米をつくり、その土地の季節の野菜を育て、麴菌の培養、発酵食品なども可能な限り手づくりしてきました。 生活の面でも、自然の循環に沿った、微生物や環境にやさしい生活を試行錯誤しつつ楽しみながら実践しています。地道に続けているうちにありがたくも、考えに共感してくれる方や多くの仲間ができました。
私がこれまで実践してきた自給自足の生活とは、「自己軸を高める暮らし方をする」ということになります。自己軸を高めるとは、「自分で考えること」「自分で行動すること」「自分の力で問題と向き合うこと」「自分で責任をとること」などになります。 このように考えると、「まだまだ自分にできること、やりたいことがある」「より自然を豊かに感じる暮らしに、もっともっと近づきたい」という思いが、しだいに強くなりました。
私は、これまでもお米や季節の野菜、調味料などをたくさんつくってきましたが、それでもたくさんの野菜や食材を買っています。そして毎週ゴミをゴミステーションに出しています。ゴミを捨てるということは、循環させていないものが出ているということです。 そして、このたび、理想的な環境の場所に巡り合うことができ、転居することになったのです。ご縁があり、のどかな里山にたたずむ、築60年の古民家を譲り受けることができました。
森の中のような鳥のさえずりが聞こえ、たくさんの生きものたちの息吹を直接感じられる穏やかなところです。 棚田や畑に加え、雑木林もあり、少し整備すれば沢に水が流れそうです。新しい生活はまだ始まったばかりですが、次々にイメージが生まれ、なんでもできそうな気持ちにさせてくれます。 私はこの土地で、さらにリアルに、まずは、健康でからだが動く現状に感謝しながら、自然とともに生き、積極的にほかと交わり、自分を生かしていきたいと考えています。
・米や野菜づくりを、自然に即した方法で続けていくこと ・土地の麴菌で発酵食品をつくり、病気を遠ざける暮らしを多くの人に伝承していくこと ・さらに、水まわりの整備、山林の整備、電気などのエネルギーの自給 ・農業コンポストや、コンポストトイレづくり……など このように、やってみたいことにあふれています。実際、転居とはいっても引っ越し先はこれまでの住まいの隣町で、医師としての職場である七合診療所への勤務は今までどおり変わりません。
自然に沿った暮らしをしていると、あらゆることが広く見えてきます。自給自足を実践することが、さまざまな問題を解決するためのひとつの策であり、第一歩になりうることも実感しました。 そして、暮らしにおいて何が正しいということはなく、答えなどありません。100人いれば100とおりの答えがあり、「こうするのが正しい」というものはないのです。
私自身も衣食住から子育てのことまで、日常のなかで、「どうやって生きればいいのか」ということを、ただ確かめたくて実践してきたのです。 ですから、私の暮らしのまねをしてくださいというわけではありません。それぞれが、自分なりのやり方で、自然に沿った無理のない生活を考え、実践し、楽しく、健康に暮らしていただければと思います。
普段、患者さんと接したり、人と話をしたりしているなかで感じるのは、多くの人はすぐ前の結果だけを求める傾向が強いということです。本当は自分のことだけでなく、子どもや孫、家族、地域、日本、さらにはほかの国の人たちにまで視野を広げて、先のことを考えるのが今を生きる人間の責任でしょう。 また、人間だけではなく、動物、植物、微生物、さらには地球そのものにとっていいことは、自分の健康にとっていいことになると思います。それが自然に沿うということの本質になります。
本間 真二郎(医師)