「カップヌードル」は2種類あった 米国品には入っていない危険な添加物
インスタント麺は、「体に悪そう」というイメージが定着している食品のひとつである。しかし、どう体に悪いのかを具体的に説明できる方は意外に少ないのではないだろうか。
「インスタント麺の問題点としてまず挙げられるのは、塩分の過剰摂取です」
『なにを食べたらいいの?』(新潮文庫)の著者で「加工食品診断士協会」代表理事の安部司氏はそう指摘する。
「例えば、エースコックの『(コンビニ限定)スーパーカップ1・5倍 ブタキムラーメン』は、ナトリウムの食塩相当量が9・4グラム。厚生労働省が2015年に出した食事摂取基準では、1日あたりの食塩摂取量は男性は8グラム未満、女性は7グラム未満と定めていますから、このカップ麺を1つ食べるだけで上限を超えてしまうことになります」
食塩9・4グラムとは、小さじ2杯ほどの量。それをコップに入れて水で溶かしたものはしょっぱくてとても飲めないが、インスタント麺では可能なのは、他の添加物によって味をまろやかにしているからである。
「よく『和食では塩分をとりすぎる』と言う人がいますが、あれは全くの勘違い。確かに味噌や梅干しの塩分濃度は高いですが、これらは決して大量に摂取するものではありません」
と、安部氏。
「お味噌汁を何杯もおかわりしたり、1回の食事で5粒も6粒も梅干しを食べたりしていれば問題ですが、基本的にこれらは塩分が味にそのまま出ているので、そんな量を食べることはまずない。つまり、和食は、塩分濃度が高いものが含まれていても大量には摂取できないようになっており、自分が摂取している塩分量に気付けないインスタント麺の方がよほど問題です」
おなじみのカップ焼きそばも
また、インスタント麺には塩分と同様、油分も大量に含まれている。
「カップ麺の多くは麺を一度揚げてから乾燥させる『油揚げめん』を使用しているため、脂質の量が非常に多くなるのです」(同)
例えば、「ペヤング ソースやきそば 超大盛」には、脂質が54・3グラムも含まれる。ちなみに先に触れた厚労省の食事摂取基準では、1日の食事の中で脂質によるエネルギー摂取は全体の20%から30%に留めるようにと推奨されている。これはグラムに換算すると、男性で48グラムから88グラム、女性で38グラムから66グラムとなる。「ペヤング ソースやきそば 超大盛」に含まれる54・3グラムという油の量が如何に異様な量であるかが分かるだろう。
ちなみにこの商品の総カロリーは1081キロカロリーにもなる。その点、製造元の「まるか食品」に聞くと、冗談なのか本気なのか分からないこんな答えが返ってきた。
「この商品は2人で分け合って食べたり、家族みんなで食べたり、様々な食べ方があり得ます」
カップやきそばを家族みんなで分け合って食べる――何ともわびしい食卓風景ではないか。
米国品は“フリー”の添加物
一見するとカップやきそばやカップラーメンに比べてヘルシーそうな、インスタントのそばやうどんも、
「『油揚げめん』を使用しています。例えば、『日清のどん兵衛 特盛天ぷらそば』の脂質の量は37・3グラムにもなります」
と、先の安部氏。
「これらのインスタント麺のゆで汁を冷蔵庫に入れてみて下さい。すると、表面に白い油が固形化してきます。これは硬化処理を行った植物油脂であると考えられます」
ポピュラーなインスタント麺である「カップヌードル キング」の食塩相当量は7・6グラム、脂質は20・5グラム。「カップヌードル」は麺にもスープにも、味覚障害を引き起こす可能性があるたん白加水分解物が含まれている。また、「カップヌードル」だけでなく、多くのインスタント麺には、うまみ調味料としてグルタミン酸及びグルタミン酸ナトリウムが使用されている。
「この添加物は日本人の食生活の中に溶け込んでいますが、マウス実験では神経への影響があることが判明しており、アメリカなどではこれを摂取しないようにする風潮が広まっている。そのため、アメリカで出回っている「カップヌードル」にはグルタミン酸ナトリウム(MSG)が入っておらず、“MSGフリー”と表記されています」(同)
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「ハッピーターン」にまぶされている「ハッピーパウダー」なる粉
うまみ調味料として知られるグルタミン酸及びグルタミン酸ナトリウムは、多くのインスタント麺に使用され、我々の食事にお馴染みの存在だ。だが、
「マウス実験では神経への影響があることが判明しており、アメリカなどではこれを摂取しないようにする風潮が広まっている」
と解説するのは、『なにを食べたらいいの?』(新潮文庫)の著者で「加工食品診断士協会」代表理事の安部司氏だ。この万能調味料は菓子類に使用されることも多く、例えば、「ハッピーターン」にまぶされている「ハッピーパウダー」なる粉は、
「グルタミン酸ナトリウム、食塩、たん白加水分解物に砂糖を加えたものです。グルタミン酸ナトリウムと食塩とたん白加水分解物は食品にうまみを加える“黄金トリオ”で、鶏がらスープの素などにも使用されています」(同)
たん白加水分解物は味覚障害を引き起こすとされ、グルタミン酸ナトリウムがアメリカで消費者から“敬遠”されていることは前述した。さらに冠動脈疾患のリスクを高めることが分かっているトランス脂肪酸についても日本とアメリカで対応に「温度差」がある。
「植物油脂の多くでは、元々の液状の油脂を水素添加などの加工で硬化する処理が行われるのですが、その生成工程でトランス脂肪酸が副産物として出来ます」
と、安部氏は続ける。
「そのため、アメリカでは、水素添加加工はすでに全面禁止されている。一方、日本にはそうした規制は何もない。ゆえに、原材料表示の中に『植物油脂』とあっても、業者が自主的に記載しない限り、トランス脂肪酸が含まれているのかどうかが分からないのです」
植物油脂が含まれている意外な物としては、チョコレート類が挙げられる(掲載表参照)。
「チョコレート菓子の原材料表示を見ると、カカオマスやココアバターよりも植物油脂が先に書かれているものが多くあり、その植物油脂はトランス脂肪酸を含むものである可能性も十分あります。これは、カカオ豆からとれる油脂の代わりに、コストが安く、柔らかさの調整がしやすい植物油脂を多く使用していることを意味します」(同)
各社の回答は…
トランス脂肪酸について各社に問い合わせたところ、森永製菓は「含まれている製品もございます」、明治は「(リストにある商品は)含有量0グラムと表示できるもの」、ロッテは「含まれているものもあります」との回答が寄せられた。
コーデックス規格という国際食品規格では、植物油脂が5%以下のもののみチョコレートと表示できるが、
「日本では5%を超えるものもチョコレートと表示できます。特に“くちどけ”などと謳っているものは植物油脂でその柔らかさを調節していることが多く、カカオ豆の成分よりも植物油脂の含有率が高いものが多い」(同)
植物油脂の含有率が高いチョコレートは食べたくない、という方には、商品の原材料表示をしっかり確認していただきたいが、
「現在、添加物を全く摂取せずに生きていくことは難しい。大事なのは、食品を買う際にしっかりと裏の原材料表示を見ることです」
と、安部氏は語る。
「そして、そこにある食品添加物の表記が何行までなら自分自身が許容できるか、目安を作っておくと良い。よく分からない添加物が何行も続いて記載されていたら、その商品は避ける。逆に1行くらいなら目をつむる、というやり方です」
おにぎりの“選び方”
コンビニやスーパーで売られているおにぎりにも“選び方”のコツがある。
「例えば、鮭おにぎりの原材料表示には、塩鮭、焼き鮭、ほぐし鮭などと書かれたものがあります。この場合、元の素材により近い塩鮭が最も安全性が高く、添加物が多く含まれている可能性が高いのは、切り身をつくる際に出た端の部分を寄せ集めてフレーク状にしたほぐし鮭ということになります」(「食の安全を考える会」代表の野本健司氏)
基本的に全ての加工食品は「安かろう悪かろう」だが、高ければ良いというものでもない。ただし、正しい情報が、より賢明な商品選びに繋がることは間違いないのである。