カゴ台車による事故が問題となっています。ロールボックスパレットと呼ぶらしいです。
パワーゲートを使用して荷扱い中に、カゴ台車が落下して転落や下敷きになるケース。
ゲートが完全に着地していない状態で降ろしたため、台車がひっくり返りそうになり手で押さえようとして下敷きになるケース。
筆者もいろいろ経験がありますが、例えば路上など荷卸し場所が左右斜めに傾いていると、後ろまで引っ張ってくるのがもう大変です。やっとストッパーの所まで持ってきても、低い方へ台車が持って行かれるので大変危険な思いをします。
搬入口も水平な所ばかりではありませんから、苦労したことがあります。
スロープ状に前が低くなっていると、後ろまで持ってくるのが大変。クレート(牛乳の箱)で山盛りになった台車はそう簡単には動きません。
逆に後ろが低くなっている搬入口もあります。これならやり易いかといえば、とんでもないことになります。ラッシングを外した途端、一斉に台車が動き始めます。台車のストッパーが効けばいいのですが、ゆるいものは動き始めます。
もう一つは中途半端な高さのホームがあることです。ゲートが下まで降り切らない高さでの作業となります。ここではゲートが不安定となり、降ろす時に台車が弾む現象が起きたりします。
ゲートのストッパー自体もいろいろ不具合があり、古くなると役に立たなかったり、何かの拍子にストッパーが収納されてしまう事があります。
さらに古い車両だと思いますが、ゲートの後ろ側がすでに下に下がっているためにストッパーが効かず、そのまま荷物が落下してしまうケースもあります。
筆者は無事でしたが、同じ会社であったり、搬入口でいつも会うドライバーの労災事故の報に何度か接しました。
カゴ台車の下敷きになり死亡したケース。台車が倒れそうになり抑えようとして下敷き、腰椎骨折になったケース。台車と共にゲートから転落し、救急搬送されたケース。
初心者の事故ではなく、数年の経験があるベテランの人に多いようです。
カゴ積カゴ降ろしは水平な場所と、ゲートの床面を斜めにして降ろすだけの場所でのみ安全だと思った方が良さそうです。
毎日新聞2018年8月20日記事から
ネット通販の普及などで、全国で取り扱われた宅配個数は2016年度、40億個の大台を突破した。多忙を極める物流の現場では、効率よく大量の荷物を運べる格子状の台車、通称「カゴ車」が活用されている。
しかし、死傷事故も起きており、労働局や専門家は使用上の注意を呼びかけている。【堀和彦】
「もうこんな仕事は辞めて、トラックから降りたい」。千葉県に住む女性(47)は、宅配便大手の協力会社の運転手だった夫(当時51歳)が漏らした言葉を思い出すたび、悔しさがこみ上げてくるという。
夫は昨年3月、東京都内の集配センター付近で、カゴ車の下敷きになり、死亡した。
大手通販サイトの荷物を扱うことが多く、その日も飲料水の段ボールがうずたかく積み上がる状態だったという。
女性の夫は、荷物が満載のカゴ車をトラックで別の拠点に運ぶ業務を担当。一人で搬入作業をしていたが、何らかの影響でカゴ車のバランスが崩れた。
カゴ車の正式名称はロールボックスパレット。荷物を効率的に運ぶことができ、物流ネットワークの現場で欠かせない資材だ。
荷物を満載すると高さ2メートル以上、重量は500~600キロになるとされる。視界が遮られた状態で動かす作業が求められるが、不慣れな使用実態もあるという。
全国の陸上貨物運送事業(陸運業)の労災事故は昨年、1万4706件で16年ぶりの高水準を記録した。神奈川労働局の管内は9年ぶりに900件を超えた。
同局は今年3月、物流大手の県内支社に、局長名で要請文を出した。神奈川県内の事故のうち大手が占める割合が上昇していることから、その抑制を求める内容の要請文で、その中でカゴ車の労災防止対策についても「抜本的な見直し」を促した。
カゴ車を含む「人力運搬機」による労災事故は昨年、全産業で4300件近く発生し、10年間で800件ほど増えた。
だが、カゴ車は統一された名称がなく国の労災統計にも区分がないため、正確な事故の実態は把握されていない。
労働安全衛生総合研究所は、06年に起きた休業4日以上の労災から抽出調査を実施し、陸運業を中心に年間で1115件が、カゴ車が絡む労災事故にあったと推計した。
同研究所研究員の大西明宏さんは「適切な使い方が社内で教育されているか疑問だ」と語る。事故は倒壊や手足を挟まれる事例が目立ち、調査では作業経験1年未満の労働者の労災が半数近くを占めた。
大西さんは「歩道などの僅かな段差や傾斜も危険だが、最近は小型スーパーなど荷さばき場が狭い現場などが多く、改善が必要」と話す。
同研究所と厚生労働省は全国の労働者向けに「労災防止マニュアル」を作成。作業時にヘルメットや手袋、安全靴の着用を義務付けて、段差や傾斜に細心の注意を払うよう呼びかける。「押し」「引き」「よこ流し」といった操作方法も細かい解説をつけた。
「いつか(荷物に)つぶされるかもしれない」。子どもの学費のために数年前ほど前から働き始めたが、女性の夫はそう不安をうち明けることもあったという。女性は再発防止の徹底を願っている。