薬のオーバードーズ:過剰摂取になるのは第1に医者の問題で、1回に大量の薬を出すこと。第2に患者の側にも医者への依存、薬への依存があるためです。種類を問わず薬は怖いものだと思うなら、自分から減らして欲しいと言うでしょうから、この場合もウインーウイン関係が成り立っています。その結果医者は奨励金等で儲かりますが、患者は思わぬ副作用を抱えて症状に苦しむことになります。患者は医療のことは分らないからお任せで良いと思っていることになりますが、本当にお任せで良いかどうか。死んだら死んだで訴えるでしょうから、その前に薬に対する知識を持つことが必要でしょう。必要のない症状を抱える前に。
20161117_01_01.pdf (jpn-geriat-soc.or.jp)参照して下さい。
たくさんの薬は害になる!? ~“多剤服用”の深刻なリスク~ (nhk.or.jp)
たくさんの薬を飲む“多剤服用”。最新の研究で、高齢者が6種類以上の薬を服用すると副作用の危険性が高まることがわかってきた。中には、多種類の薬の副作用で寝たきりになったり、認知機能の低下から認知症と診断されてしまうケースまで起きている。現役世代もひと事ではない。健康食品として扱われるサプリメントと薬を併用すると副作用の危険性が高まる可能性が指摘され始めている。“多剤服用”の深刻なリスクの実態とその対策を考える。
出演者
秋下雅弘さん (東京大学大学院教授・医師)
武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)
<番組の内容>
寝たきりの人が劇的改善 原因は薬だった
認知症の疑い 2割の人が薬の多さが原因
なぜ薬が6種類以上でリスク高まる?
高齢者だけ?現役世代にリスクは?
副作用に注意!薬の種類との関係は?
薬とサプリメントの併用に注意!
減らすときのポイントは?
注目される認知症“減薬”プロジェクト
薬との上手なつきあい方
寝たきりの人が劇的改善 原因は薬だった
多剤服用が原因で、寝たきりの状態にまでなったという人に、話を聞くことができました。新江敏子さん、80歳です。3年前、うつや狭心症、不眠などで同時に複数の医療機関にかかっていた、新江さん。それぞれの病院から処方された薬は、12種類にのぼっていました。
新江敏子さん
「(飲むだけでも)大変ですね。飲みすぎているかなというのも、その時はあまり考えていなかったです。」
ある日、新江さんに異変が起こり始めます。その様子を、夫の祥泰さんが目の当たりにしました。
夫 祥泰さん
「ここで倒れちゃっているんですよ。顔半分があざでした。」
ふらつくことが増え、転倒。動くことが少なくなり、その後、寝たきりの状態にまで陥ってしまいました。当時のカルテです。日常的に介護が必要になり、夫の祥泰さんがつきっきりで、行っていました。
夫 祥泰さん
「何が(原因で)悪いんだか、トイレ行くのでも歩けなくなって。」
新江敏子さん
「『早く死にたい、死にたい』って言っていました。もう治らないし、ただ寝てるだけはでしょうがないから、『もう早く死にたい』って言っていました。」
転機となったのが、現在の主治医、橋本昌也さんに出会ったことでした。高齢者の医療に詳しい橋本さんは、ふらつきの原因が、薬の種類の多さにあるのではないかと疑いました。
医師 橋本昌也さん
「どうも睡眠薬とか安定剤とか、そういうのを飲んでいたようだと。もしかしたら原因なんじゃないかなと思って見ていった。」
最新の研究で、高齢者は薬の種類が増えるほど、体に異常が起こりやすくなることが明らかになっています。特に、6種類を超えるとそのリスクがより高まるのです。
薬の種類が増えると、なぜ、体に異常が起こるのか。大きくかかわっているのが、老化に伴って、薬を代謝する肝臓や、排泄する腎臓の機能が衰えることです。薬の種類が少ないうちは、代謝、排せつされ、さほど問題は起きません。しかし、6種類以上では代謝する機能を超えるため、体内に蓄積されやすくなってしまいます。薬の種類が増えるほど、思いもよらない異常をきたすというのです。
新江さんの場合、蓄積された薬の中で、睡眠薬などの4種類に問題があったのではないかと、橋本さんは考えました。それぞれの薬には、ふらつきなどを引き起こす副作用があります。1つでは副作用が少なくても、複数、蓄積されていると症状が強く現れる可能性があるからです。
合原
「薬が原因だって疑うことはありましたか?」
新江敏子さん
「いや、疑ってなかったですね。飲めば治ると思っていたから。」
橋本さんは、新江さんの体調を見ながら、副作用を疑った睡眠薬から見直しました。最終的に、5種類にまで減りました。すると、1か月ほどで自力で歩けるほど、回復。夫婦の日常を取り戻すことができました。
新江敏子さん
「本当に先生にお会いしてなかったら今がないと思います。」
新江さんのように、多剤服用のリスクを抱える高齢者は、少なくありません。7種類以上の薬をもらう人の割合は、64歳以下では10%。一方、75歳以上になると、24%に増加。4人に1人にのぼります。
認知症の疑い 2割の人が薬の多さが原因
多剤服用による、体の異変。ある病院では、認知症を疑った患者のうち、実は薬の種類の多さに原因があったという人が2割にのぼっていました。
神戸市にある認知症患者が多く訪れる、脳の専門病院です。認知症の検査に来た、小池斐太郎さん、85歳です。3年前、ガスやたばこの火を消し忘れるなど、物忘れが急に増え、他のクリニックを受診しました。
娘 晴美さん
「1日寝ているような状態が続いたりして、ちょっと認知症になったのか。」
この時、「認知症」と診断され薬も処方されました。小池さん親子は、さらに詳しい検査をしてもらいたいと、この病院を訪れました。
小池さんを診察した、医師の平田温さんです。脳の画像を見ると、認知症の特徴の一つ、脳の萎縮は、さほど見られませんでした。
医師 平田温さん
「隙間が多いと脳が縮んでいるんだけど、あなたの場合は年齢相応ぐらい。」
平田さんは、小池さんが飲んでいた16種類の薬のうち、鎮痛薬と睡眠薬、合わせて4種類に注目しました。それぞれの薬には、物忘れや認知機能の低下を招く副作用があります。小池さんの場合は、これらの薬の副作用が、認知症と同じような症状として現れていると考えました。原因とみられる薬を減らすと、小池さんの物忘れは大きく改善しました。
医師 平田温さん
(物忘れのテストで)「何があったのか1回隠すので覚えてください。」
小池斐太郎さん
「スプーン、歯ブラシ、時計。」
医師 平田温さん
「すごい、30点満点で27点。」
物忘れのテストの結果も、問題ありませんでした。小池さんは、認知症ではないと判断されたのです。
医師 平田温さん
「現実に悪さをしている薬をやめてないために(症状が)良くならない。早い時期に気が付いてやめることで対応できるのではないかと。だから、非常に大きな問題だと思っているんです。」
複数の薬を飲んでいる皆さん。決してひと事ではありません。
なぜ薬が6種類以上でリスク高まる?
武田:多剤服用のリスクを実際に研究された秋下さん、6種類を超えると体に異常が出やすくなるという研究結果ですけれども、詳しくは、どういうふうに見たらいいのでしょうか。
ゲスト 秋下雅弘さん(東京大学大学院教授・医師)
秋下さん:基本的には、薬が多くなればなるほど薬の副作用は出やすくなるということなんです。しかし、この研究では、特に6種類以上の方は副作用の発現率が10%を超えていましたし、何種類以上から増えるのかなというのを特殊な解析で検討したところ、5種類まではそうでもないけど、6種類以上から急に増えるというような解析結果になりましたので、6種類ということを報告させていただきました。高齢者はやはり、薬の代謝・排泄機能にもかなり個人差がありますので、2種類でも問題が起きる人もいますし、10種類でも大丈夫という人もいます。ですから、6種類というところにこだわって、自分が6種類より多いからと、自己判断で薬をやめるようなことはしていただきたくないと思います。
高齢者だけ?現役世代にリスクは?
武田:多剤服用の問題、高齢の方は特にということですけれども、私たちの世代も何種類も薬を飲んでいる人はいると思うんですよね。
合原:こちら、年代別にどのくらい薬をもらっているかを示したグラフです。64歳以下の現役世代でも、オレンジから赤の範囲、実に半数以上で3種類以上の薬をもらっているということなんです。秋下さん、まだ高齢ではないから大丈夫だと考えていいんでしょうか。
秋下さん:やはり、そうではないです。高齢者に比べると、まだ代謝、あるいは排出する機能は保たれていますのでリスクは低いです。しかし、背景となっている病気をいくつかお持ちで、こういう薬の種類になっていると思うのですが、(年を重ねると)そういう病気もどうしてもまた増えてきます。そうすると、薬ももっと増えてきますので、多剤服用予備軍というような状態の人たちだと思います。
武田:ということは、私たちの世代から、ちゃんと知っておいたほうがいいということですね。
秋下さん:はい。多剤服用にならないように、予備軍でとどまっていただけるように、なるべく新しい病気を増やさない、新しい病気にかからない。そのためにどうしたらいいかということを考えていただく必要があると思います。
副作用に注意!薬の種類との関係は?
武田:薬の種類、どんな薬を飲んでいるのかはやはり関係あるんですか。
秋下さん:その中に含まれているお薬に、睡眠薬とか鎮痛薬、あるいは精神安定剤といった、いわゆる副作用を起こしやすいお薬が入っていることが多いので、まず、そういったお薬が問題を起こすことがあります。ただ、必ずしもそういうお薬が入っていなくても、薬の種類が多い人は副作用が多いんですね。しかも、例えば高血圧のお薬や、花粉症のお薬、胃薬ですとか、ごく普通に皆さんが飲まれているお薬でもそういうことが起きうるということなんです。
薬とサプリメントの併用に注意!
合原:この多剤服用のリスクというのは、処方される薬だけではないんです。サプリメントや健康食品にも注意が必要です。いわば、「隠れ多剤服用」ともいえる、医療者が把握できず、本人も気づきにくい問題なんです。
合原
「今、サプリとか飲んでいますか?」
50代女性
「1、2、3、4。それから腸内環境を良くするものを飲んでいるので、6種類。」
30代女性
「ビタミン系が3種類と、亜鉛と、あとアルファリポ酸っていうので5種類飲んでいます。」
合原
「お薬と併用していますか?」
30代女性
「していますね。頭痛薬とか、風邪薬とか、胃薬とか。」
50代男性
「血圧の薬を飲んでいるので、1個だとなんか寂しいからサプリをいっぱい飲んで。なんか薬いっぱい飲んでいるなって感じ。サプリは基本的に毒じゃないと思うので。薬でもないから、別に特にそんなことは気にしてないです。」
サプリメントを複数飲んでいる人の割合は、年齢とともに増えていきます。20代では3割ほどですが、50代を超えるとおよそ半数にのぼります。専門家は、薬だけでなく、サプリメントもその種類が増えるほど、リスクは高まると指摘します。
国立健康・栄養研究所 薬学博士 千葉剛さん
「健康食品は薬ほどは作用は強くないんですけれども、やはり何かしら人の健康に影響する、影響を及ぼす成分が入っていますので、そういうものをやはり多量にとる、複数とることによって体に何かしら影響が出てくる可能性はあります。」
去年発表された、高齢者の多剤服用に関する国の指針です。その中でも、サプリメントを含む健康食品と薬を併用すると、重大な影響があると指摘されています。
高血圧の薬と合わせて多くのサプリメントを飲んでいると話してくれた、津田広信さん、59歳。健康が気になり始めた30代から飲みはじめ、年齢とともに種類が増えていきました。
津田広信さん
「酵素アンド酵母、ミドリムシダイエットなど、14種類です。ふだんから毎日お酒も飲むし、太ってきているので、せめてこういうのを飲んでごまかしている。自分の気持ちをごまかしているみたいなものです。」
津田さんの飲み方をチェックするため、今回、薬とサプリメントに詳しい薬剤師の力を借りました。薬剤師が特に注意する必要があると指摘したのは、薬とサプリメントの飲み合わせ。血圧の薬と飲み合わせの悪いサプリメントを見つけました。
薬剤師 千葉一敏さん
「血圧のために飲んでいるということで、2つの健康食品(サプリメント)を飲まれているということだった。医薬品と健康食品を見ると、確かに健康食品のほうがかなり弱い作用ではあるんですけど、足すことによってさらに医薬品の効果が出すぎてしまうことがあるので、こういうのは控えたほうがいいですね。」
津田さんは、高血圧でかかっている医師に、サプリメントを使っていることを伝えていませんでした。
津田広信さん
「実際に飲んでいる血圧の薬に対して悪い作用が起きるのは、ちょっと問題。とりあえずお医者さんに持っていって見てもらいます。」
薬とサプリメントの飲み合わせについて、相談を受け付けているサプリメントメーカーもあります。およそ150種類のサプリメントを取り扱う会社。飲み合わせについての電話相談は、年間2万5千件にのぼっています。
合原
「どうやって電話対応ってされているんですか。」
スタッフ
「お客様から電話がかかってまいりましたら、こちらに商品名を打ち込みましてこちらにお薬名を入力いたします。」
薬とサプリメントをそれぞれ入力し、飲み合わせが悪い場合、サプリメントの摂取を控えるよう、アドバイスしています。
サプリメントメーカー 検索システム担当部門 阿部泉さん
「今サプリメントを飲んでいらっしゃる方は、やはり50代60代の方が多くいらっしゃいます。そういった方はお薬を飲み始める年代とちょうど重複する年代でもありますので、お客さまにきちんと情報を提供するということを優先して行っております。」
薬とサプリメントの多剤服用。減らすとき、どんな事に気をつければいいでしょうか。
合原:サプリメントなどを飲んでいることを医師に伝えていないという人の割合というのが、実に7割にものぼるという調査もあるんですね。実際に取材をした中にも、高血圧を治療中の女性が、医師に相談をせずに血圧が高めの方にというサプリメントを多くとって、急激に血圧が下がってしまうというケースもありました。
武田:私はそれほど飲んでないのですけれども、周りに飲んでいるという人が多いんですよね。処方された薬に加えて何種類ものサプリメントをとってしまう。秋下さん、どんなリスクがあるとお考えですか。
秋下さん:何種類も、特に10種類も飲んでいらっしゃるような方の場合には、やはり多剤服用と同じような問題というのが起きうる。しかも、処方薬も一緒に飲まれていたりしますので、そういうものと合算するとかなりの数になることを考えますと、リスクを自覚していただく必要はあると思います。
武田:サプリメントは、きちんと相談して、医師や薬剤師さんに相談してとったほうがいいということですか。
秋下さん:はい。厚生労働省の指針でも、「サプリメントなどを含めて注意しましょう」と出していますので、薬剤師さんに聞いていただいて、そういうことをチェックすることも必要になります。その一方で、特に高齢者で栄養状態などに問題がある方の場合は、必要なサプリメントもありますので、サプリメントは無用であるということではなくて、よく相談した上で使うというふうにしていただきたいと思います。
減らすときのポイントは?
武田:今とっている薬、あるいはサプリメントの種類を、自分にとって適切な量に減らしたいと思った場合、どうしたらいいのでしょう。
合原:こちらがそのポイントです。まず、自己判断で薬を減らさない。そして、やめないということですね。そして、病院にかかるときは、お薬手帳に薬の情報だけではなくて、飲んでいるサプリメントについても書いて、きちんと医師と情報共有をすることが大事になってきます。
武田:お薬手帳に、こんなサプリメントをとっていますというのを自分で書いてもいいんですか。
秋下さん:もちろんです。お薬手帳はシールを貼ることが多いのですが、それ以外のところというのはただの手帳ですので、手書きで書いていただくのもいいと思いますし、できたら、サプリメントを買ったときについている説明書などを切り取ってペタッと貼っていただく。名前を間違えたりすると調べるにも調べられなくなりますので、正確な情報という意味ではそういうものをうまく使っていただくといいかなと思います。
合原:そうした中、いま、多剤服用の問題を大きく動かすのではないかと期待されている取り組みがあります。薬を減らすことで、進行した認知症の症状を改善しようという大規模なプロジェクトです。
注目される認知症“減薬”プロジェクト
首都圏に48ある、有料老人ホームです。2300人あまりの入居者のうち、半数以上が認知症を患っています。薬を減らして認知症を防ぐ、去年10月から始まったプロジェクト。薬を減らすことで、認知症の症状の改善を目指しています。東京大学の薬学の専門家や、高齢者医療の専門医などが協力して、認知症の高齢者1000人以上を対象に、薬を調整。効果がどの程度出るのか、検証しています。
まず取り組んだのが、薬の種類や量が適正なのか、確認することです。医師や薬剤師、介護士などの専門チームを立ち上げ、日々の体調の変化をみながら、慎重に検討しています。
プロジェクトが始まって半年あまり。薬の種類や量が適正ではなく、改善の余地がある人が実に、7割を超えていることが分かりました。
プロジェクトに参加する医師 髙瀬義昌さん
「今までの日本の医療は、どちらかというと薬の種類は多くて、減らすタイミングを見逃して、かえって副作用が大きくなってしまうことがあるので、これから頑張って挑んでいかなきゃいけないと思っています。」
薬を減らすことで、症状が大きく改善する人も出てきました。稲垣ミヨさん、91歳です。12種類の薬を飲んでいた、稲垣さん。当時、症状は悪化していました。
介護士
「はいかいされたりとか、大声出して、『助けて』なんていう声も頻回に聞こえていました。」
暴力や暴言で、トラブルを起こすこともありました。稲垣さんの薬をチェックすると、12種類から7種類に減らすことができました。それから2ヶ月。暴力行為は一切なくなり、会話を楽しむまで回復しました。
介護士
「ここの生活はどうですか?」
稲垣ミヨさん
「いいですね。」
さらに、思いがけない効果が。周囲にも、いい影響が広がり始めたのです。
合原
「(介護士の)負担としてもかなり減った?」
介護士 山﨑善斗さん
「かなり減りましたね。やはり家族の方は、身体的な負担より、心の負担が大きいと思うので、何でこうなっちゃったんだろうとか。あとはここに足を運ぶのが重くなっていたりとか、そういうのが軽減されたほうが僕たちは嬉しいと思います。」
薬との上手なつきあい方。高齢者と現役世代、それぞれのポイントをみていきます。
合原:このプロジェクトによって、症状の改善だけではなくて周囲の人たちの負担もとても軽くなっているのを感じました。例えば、介護スタッフの方は入所者1人1人に向き合える時間が増えたといいます。さらに家族は、症状が改善したことで、再び親とコミュニケーションを取ることができるようになったと喜びを感じている方もいらっしゃいました。このプロジェクトでは、今後、減薬による効果をまとめて、指標を作成し、さまざまな医療機関や介護施設に広めていきたいとしています。
薬との上手なつきあい方
武田:多剤服用のリスクや減薬の効果を見てきましたけれども、やはり対策を進めていくべきだと感じました。患者や医師や薬剤師、すべての人の意識の変化というのが求められると思うんですけれども、そのために何が必要なのかキーワードを書いていただきました。
秋下さん:「足し算医療からの脱却」ということだと思います。薬が効かない場合に、ついつい、次の薬、次の薬ともらう、あるいは処方すると。こういうことが行われてきたわけですが、もし1つ足すのであれば、1つ引くと、こういう考え方です。それが「足し算医療からの脱却」ということではないかと思います。
武田:いま患者さんが持っていらっしゃるすべての症状を改善しようということで薬が増えていってしまう。そうではなくて、その患者さんの状態の何が大事なのかっていうのを、見極める作業にもつながると思うのですが。
秋下さん:例えば若い人であれば、心筋梗塞とか脳梗塞、あるいはがんといったような、かなり命に関わるような病気が大切。これは異論がないところだと思いますが、高齢者になってきますと、転倒して骨折をする。その原因となっている、ふらつきという問題もあります。それから、もう1つは認知症の問題ですね。こういったことのほうが、心筋梗塞の予防などより重要な場合があるんですね。そうしますと、若い人と高齢者では優先順位が変わってくるということが起きますので、そこはよく考える必要があると思います。
武田:そういった優先順位をつけて、薬の種類も整理していくことによって、患者さん自身も状況が改善し、周りも、社会全体もメリットがあると、その可能性があるということなんですね。
秋下さん:そうですね。
武田:ありがとうございました。
※専門家が「多剤服用のリスク」情報をまとめた一般向けパンフレット『高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用』をこちらからダウンロードできます。(NHKサイトを離れます)
徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”
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