ワクチン推進小池知事の下にある『東京都医学総合研究所』から論文が紹介されています。もう隠せなくなったのか、頻回接種に警鐘を鳴らす内容が行政の研究所から出てきたことは驚くことでもあります。内容はいままで何度も掲載してきたigG4による免疫寛容です。そもそも頻回接種に警鐘を鳴らしたのはEMA:欧州医薬品庁ですから、公的機関から警告されていたわけです。しかし日本だけはそれを無視してワクチン接種を奨励してきました。
mRNAワクチンの反復接種はSARS-CoV-2の免疫回避を促進する
今回の論文のポイント
- mRNAワクチンの反復接種により血清IgG4が上昇すると、SARS-CoV-2の免疫回避を促進し、ワクチン接種の効率が落ちる原因になる。したがって、mRNAワクチンに安易に頼りすぎている現状を反省するべきかも知れない。特に、オミクロン変異株は、免疫回避能*1が強まっているので要注意である。
- 頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、IgG3に結合することにより、IgG3を介した抗体依存性細胞障害(ADCC)*2が阻害され、その結果、免疫寛容*3の状態になり、SARS-CoV-2の免疫回避を促進することが一つの機序として、考えられる(図1)。
- ほぼ同様のメカニズムにより、頻回のワクチン接種により、がんや「IgG4関連疾患」が促進する可能性がある。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療においては、2019年12月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックが勃発してから、わずか1年以内にmRNAワクチンが製造・供給されました。以来、いくつかの性質の異なるバリアント(主としてスパイク蛋白ドメインの変異による)の出現にも関わらず、mRNAワクチンの接種のおかげで幸運にも切り抜けて来ました。今後もオミクロンの新しい亜種が登場し続けている状況を考慮すれば、mRNAワクチンに頼らざるを得ない状況は続くものと思われます。しかしながら、1ヶ月前の(〈2023 8/31〉ウィズ・コロナ時代における新規オミクロン変異株EG.5の流行)で述べましたように、「このように、mRNAワクチンや抗ウイルス薬を多用し続けても問題はないのだろうか?」という素朴な疑問が湧いて来ます。実際、そのように考えている研究者は少なからずいるようです。米国南フロリダ大学のVladimir N. Uversky博士らは、頻回のワクチン接種により免疫グロブリンIgG4が上昇し、IgG3を介したADCCが阻害されることによりSARS-CoV-2の免疫回避が促進するようなメカニズムを報告しており(図1)、今回は、その総説論文(文献1)を要約して紹介致します。
文献1.
Review IgG4 Antibodies Induced by Repeated Vaccination May Generate Immune Tolerance to the SARS-CoV-2 Spike Protein
Vladimir N. Uversky et al.,Vaccines 2023, 11, 991.
【mRNAワクチン接種による副作用】
SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種によりCOVID-19の罹患率と死亡率は効果的に減少した。その一方で、アナフィラキシーショックや心筋炎などの急性期、亜急性期の有害なワクチン接種に伴った合併症はよく知られている。対照的に、mRNAワクチン接種による慢性期の副作用に関してはあまり注意が払われていない。
【IgG4の増加】
- これに関連して、mRNAワクチン接種を繰り返すと血清中のIgG4が増加することは注目に値する。HIV、マラリア、百日咳などにおいてもmRNAワクチン接種の反復によるIgG4増加は以前より、知られていた。
- 一つのメカニズムとして、頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、IgG3に結合することにより、IgG3を介したADCCが阻害されると免疫寛容状態になり、SARS-CoV-2の免疫回避を促進するのではないかと考えられる。
- それ以外にも、過剰のIgG4は、がんや「IgG4関連疾患」*4を促進することが考えられ、重要である。
【結果】
頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、SARS-CoV-2の免疫回避を促進するだけでなく、がんや「IgG4関連疾患」を促進する可能性がある。オミクロン株全盛時代の今、mRNAワクチンに安易に頼りすぎている現状を反省するべきかも知れない。
用語の解説
- *1.免疫回避能
- SARS-CoV-2の遺伝子変異を有する新規変異株は、過去の感染によって得られた免疫や承認されているワクチンによって得られた免疫を回避する可能性がある。そのため、ウイルスの感染・伝播性が増加すると、患者数や重症者数の増加につながり、医療を急速に圧迫する恐れがある。
- *2.抗体依存性細胞障害(antibody-dependent cellular cytotoxicity:ADCC)
- 活性細胞や病原体に抗体が結合すると、その抗体がマクロファージやナチュラルキラー細胞を呼び寄せ、その抗体が結合している細胞や病原体を殺傷する作用をいう。
- *3.免疫寛容(immune tolerance)
- 過去に免疫応答(反応)を起こしたことがあったり、免疫応答を起こす可能性のある特定の抗原に対して、免疫応答を起こさない状態を指す。免疫寛容が成立する背景には、過剰な免疫応答を抑制的に制御しているT細胞(regulatory T cell)が関与している可能性が高く、近年、自己免疫疾患などを対象に免疫寛容を人為的に誘導する治療法の開発が進んでいる。
- *4.IgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)
- IgG4-RDとは、主に膵臓、唾液腺、涙腺、腎臓、血管/後腹膜などを含む全身のいろいろな臓器が腫れたり、硬くなったりする原因不明の病気で、何らかの免疫異常が関わっていると考えられている。多くの患者さんでみられる特徴的な免疫異常の一つとして、IgG4が血液中で高値であること、おかされた臓器にIgG4を産生する形質細胞が数多く浸潤していることが挙げられる。膵臓や腎臓、血管/後腹膜に病変を持つ患者さんでは、一般に高齢の男性に比較的多くみられる。
世界と比べても「ワクチン接種」しまくった日本人…それでも2022年からコロナが急増しているのはなぜなのか
『全検証 コロナ政策』#1
集英社オンライン
新型コロナウィルスに対し、厚生労働省は今年度末まで自己負担なしでワクチン接種できる特例接種を続けている。今年の5月に感染症法上の位置づけが5類に変更されたが、コロナの感染予防対策としたワクチン接種は、どのような効果をもたらしていたのか。膨大なデータをもとに見てみよう。 【図を見る】ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合(上位49か国)。『全検証 コロナ政策』より
『全検証 コロナ政策』 (角川新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。
世界と比べて日本はどれくらいワクチンを接種したのか
まず、日本がどれくらいワクチンを打っているのか、これは他国と比較しないと多いのか少ないのかわかりませんので、世界における日本の位置づけを確認します。2022年末の時点において、ワクチンを少なくとも1回接種した人の割合を、多い順に並べたグラフを見てみましょう。データのある国は230か国ありますが、そのうち上位49か国を抽出します(図1)。 日本はデータのある230か国中42位の84.35%で、かなり上の方です。なお、最上位の方は100%を超えていますが、これは住民以外の人にもワクチンを打っているためです。 このグラフはイギリスのオックスフォード大学が公表している「Our World in Data」のデータを使ったものですが、首相官邸のサイトを見ると、1回以上接種者の割合は81.0%となっており、数字にズレがあります。ズレの理由は分かりません。 次に、同じく「Our World in Data」から、「people_fully_vaccinated_per_hundred」のデータを確認します。この数字は、2回接種を完了した人の割合を指すものと思われます(図2)。 83.22%と、少しだけ数字が下がりましたが、順位は上がり、データのある230か国中30位です。首相官邸のサイトでは80.1%となっています。
高齢者の方ほど積極的にワクチンを打っている
「ブースター接種」と呼ばれている3回目接種以降の接種者割合については、「Our World in Data」にありません。 首相官邸のサイトを見ると、日本の3回接種完了者の割合は68.7%となっています。4回接種以降の完了者の割合は首相官邸のサイトにも掲載されていません。なお、オミクロン株対応ワクチンの接種率は掲載されていて、45.0%となっており、回を重ねるに連れて接種率が落ちていることが分かります。 首相官邸のサイトにおいて、65歳以上の高齢者に絞ると、1回以上接種者92.7%、2回接種完了者92.5%、3回接種完了者91.3%、オミクロン株対応ワクチン74.5%となっています。高齢者の方ほど積極的にワクチンを打っていることが分かります。 先述のとおり、「Our World in Data」には、3回目以降の接種者割合は無いのですが、「100人あたりの追加接種回数」のデータはあります。このデータは、3回目以降のワクチン接種回数を総人口で割り、100を乗じた数字です。例えば、国民全員に3回目及び4回目の追加接種をした場合、200となります。 それでは2022年末の時点の100人あたり追加接種回数のデータを見てみましょう。トップ50を抽出します(図3)。
日本は「ブースター接種先進国」
こちらについてデータがあるのは210か国なのですが、日本は133.36で世界3位です。ただ、1位のジブラルタルはイギリスの海外領土であり、人口も3万数千人しかいないので、比較対象としてあまり適切ではありません。 イギリスはその他にイングランドが112.6、イギリス王室属領であるガーンジーが109.49ですが、「United Kingdom」で見ると59.81 です。 OECD加盟国で100を超えているのは、日本とチリのみであり、かつ、他の加盟国を大きく引き離しています。極めてたくさん追加接種を行っていることが分かります。 日本は「ブースター接種先進国」と呼んでもよいでしょう。1回接種・2回接種の接種者割合も上位に位置する上、このように100人あたり追加接種回数が世界トップクラスですから、日本は世界的に見ても極めてワクチン接種に積極的な国と言えます。 なお、2022年11月7日付財務省の資料「社会保障」によると、令和2(2020)年度~4(2022)年度にワクチンの確保に2.4兆円、ワクチンの接種に2.3兆円、合計4.7兆円が投入されたようです。これはこの資料が作成されるまでに発生した費用ですから、今はもっと増えて5兆円は超えているでしょう。 ではその効果についてはどうでしょうか。感染予防効果、発症予防効果、重症化予防効果、後遺症予防効果に分けて見ていきましょう。
感染予防効果
ワクチン接種率と感染者の推移を見ることで感染予防効果の有無を確認していきたいと思いますが、そもそも「感染」とは何でしょう。厚生労働省のウェブサイトを見ても肝心の感染の定義が載っていないのですが、世界大百科事典第2版はこう解説しています(太字は引用者)。 病原微生物がヒト、動物、植物の組織や体液に侵入し、あるいは表面に定着して増殖する状態になるのを感染という。微生物が体内に入っても、すぐに死滅してしまったり、素通りしてしまう場合は感染とはいわない。 このように、「増殖する状態になる」ことが必要です。体に侵入してきたコロナを免疫で「瞬殺」できれば、PCR検査にも引っかからないでしょうから、感染はしていないことになります。 デジタル庁のサイトを見ると、1~3回目のワクチン接種率の推移を確認できます(図4)。 なお、1回目と2回目接種については、一般接種のみを対象としているので、首相官邸が公表している接種率よりやや数字が落ちます。 これを見ると、2021年4月からワクチン接種が開始され、同年11月には2回目接種が70%を超えていますので、一通り接種したことになります。3回目接種については、同年12月から始まり、翌年の6月には60%を超えましたが、70%に届かないあたりで止まっています。
感染の推移はどうなっているのか
では、感染の推移はどうなっているのでしょうか。2020年と21年の感染者数の推移を縦に並べたグラフで確認してみます(図5)。これはワクチンの無かった20 年と比較するためです。 これをみると、21年の感染者数は、10月頃までは常に前年同日の感染者数を大きく上回っていましたが、ワクチン2回目接種率が70 %を超えた11月あたりになると極端に減少し、20年の数字を下回っています。この点について、「感染の波が収束したタイミングと一致しただけだろう」という見方もあるでしょう。たしかにそれもあります。しかし、「底」が非常に低い点が重要です。 第3波ピーク(21年1月8日)と第4波ピーク(同年5月8日)の間で最も感染者数が少なかったのは、3月8日の599人。 そして第4波ピークと第5波ピーク(同年8月20日)の間で最も感染者数が少なかったのは、6月21日の864人です。
ワクチンの予防効果はあったのか
つまり、波の間の「底」ですら、数が増大していたのですが、第5波ピーク以降で最も感染者数が少なかったのは、11月22日の22人であり、圧倒的に少なくなりました。11~12月にかけて、感染者数が100を切った日は、合計で11日もあります。なお、21年の感染者数が100を切ったのは、11月よりも前の月では1日もありません。 このように、「底」の数字が極端に減ったのは、単に「5波の収束のタイミングと一致して減っただけ」とは言えないでしょう。4波と5波の「底」は864人もいたのに、5波と6波の間の「底」は22人、約40分の1にまで減少したのですから。これをワクチンによる感染予防効果と言われれば、納得する人の方が多数派ではないかと思います。 では、22年についてはどうなのか。これは3年間の感染者数を横に並べた方が分かりやすいので、そのグラフを見てみましょう(図6)。
ほとんど制圧したといえるぐらい感染者数が少なくなっていたのに…
このように、21年11~12月頃は、ほとんど制圧したといえるぐらい感染者数が少なくなっていたのに、22年になると、まるで崖が生えてきたかのように感染者が急増しました。これはオミクロン株が出現したからです。 この株が最初に国内で発見されたのは、21年11月30日でしたが、そこから徐々に広がり、年が明けて大爆発しました。あまりにも凄すぎるので、この株の登場以前の感染状況を見ると、まったく大したものではないように見えてしまいます。 さきほど確認した3回目接種の接種率は、22年6月には60%を超えましたが、その後現在までで最大の波となる第7波(ピークは22年8月19日の26万1004人)が来ていますので、太刀打ちできていません。むしろ増えています。 こうやって見てみますと、21年のデルタ株まではワクチンの感染予防効果が発揮できていたと言われても納得ができますが、オミクロン株については無理でしょう。感染者数がそれまでとは比較にならないくらい爆発してしまったのですから、感染予防効果は期待できません。 ワクチンを打っても感染してしまうのであれば、ワクチンを打つ人は減るでしょう。現に減っています。これは感染が大爆発している現実を見て、「打っても意味が無いのでは」と思った人が増えたのが一因ではないかと思います。
発症予防効果
発症予防効果についてはどうでしょうか。前述のとおり、デルタ株までは感染予防効果が発揮されていたと言ってよいかと思いますので、発症予防効果もあったと言ってよいでしょう。 ではオミクロン株以降についてはどうでしょうか。感染者数が急増しましたが、これは、発症した人がPCR検査を受けて感染が確認された、というケースが大半を占めるでしょう。要するに発症者が大量発生したということですから、発症予防効果もあまり期待できないのではないかと思います。 本当はもっと感染者がいて、ワクチンのおかげで発症が抑えられていた可能性もあるかもしれませんが、それを確認できるデータがありません。 (抜粋はここまでです。書籍では重症化予防効果と後遺症予防効果についても分析しています)
文/明石順平 図版作成/小林美和子 写真/shutterstock ———- 明石順平(あかし じゅんぺい)