新型コロナウイルス

感染する人しない人

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1度も感染しない人と、何度も感染してしまう人の違いとは(共同通信社)

新型コロナウイルス「一度も感染しない人」「複数回感染する人」にどんな違いがあるのか

日本の新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数が、世界最多を記録した。複数回感染した人も続出。ワクチンの追加接種やマスクの着用など、感染対策は海外よりも万全なはずだ。なぜ何度も感染してしまうのか。

 帰省や旅行に出かけるなど、3年ぶりに行動制限のないお盆休みを満喫した人も多い。一方で、“出口のないコロナ禍”に苦しめられている人もいる。都内に住む内田恵子さん(49才・仮名)が肩を落とす。

「今年1月に、初めてコロナに感染しました。39℃の高熱に10日間もうなされて地獄のような隔離生活を送りました。でも、一度コロナにかかると抗体ができるらしいので、それからは“無敵状態”だと思って安心していたんです。3回目のワクチンも6月に打ちました。

 それなのに、8月に入ってすぐのどが痛くなった。まさかとは思いましたが、念のためにPCR検査を受けたら、また陽性が出たんです。

 私の周りにはワクチンを一度も打ってないのに感染していない人が何人もいます。なんで私だけ?と悲しくなりました」

 オミクロン株の「BA.5」が7月下旬から猛威を振るい、第7波を引き起こした。1日あたりの新規感染者数は全国で過去最高が続出し、8月10日には25万人を超えた。さらにオミクロン株の新たな変異種で、BA.5の3倍の感染力を持つとされる「ケンタウロス株(BA.2.75)」が第8波を巻き起こすのではと懸念されている。

 これほど新規感染者が増えたのは、2度、3度とコロナ陽性となる人が続出しているからにほかならない。

 内田さんが嘆くように一度も感染しない人がいる一方、複数回にわたり感染する人が後を絶たない。

 しかし、日本では複数回感染者数の統計データが公表されていない。名古屋大学名誉教授で医師の小島勢二さんが、イギリスのデータをもとに解説する。

「イギリスではコロナ流行開始から今年3月末までに約1700万人がコロナに感染しました。そのうち2回感染した患者数は8万9575人、3回が1万315人、4回が98人でした。約0.6%が『複数回感染』していることになりますが、これは3月末までの統計なので、現在はもっと増えているでしょう。また、統計により、若者は高齢者よりも再感染のリスクが高いことがわかりました」

 感染したら抗体ができるはずで、再感染はしにくいはず。なぜ何度も感染するのか──。「複数回感染」の謎を解くヒントになる論文が6月中旬、アメリカで発表された。米ハーバード大学などの研究チームによると、「一度でもコロナに感染すると、症状が治っても、体内にウイルスが残り続ける可能性がある」という。「コロナウイルス潜伏説」ともいえる、驚きの研究報告である。

同論文に目を通した血液内科医の中村幸嗣さんは、「やはりそういうことか」と合点がいったという。

「私も短期間での複数回感染について疑問に思っていましたが、“ウイルスは体外に排出されることなく潜伏し続ける”とすれば納得がいきます。

 体内に潜伏するウイルスは『リザーバ』と呼ばれます。ウイルス性の病気には免疫機能の低下によってリザーバが再活性化し、再発症するタイプのものがあります。論文は、コロナも同じように慢性的に発症する病気である可能性が高いことを示唆しています」

 たとえばヘルペスや水ぼうそう、帯状疱疹などがそれに当たる。症状が治まった後もウイルスが体内にすみつき「潜伏感染」と呼ばれる状態になる。普段は免疫によって抑えられているものの、加齢や疲れ、ほかの病気などによって免疫が低下すると再び活動し再発する。これと同じことが、コロナでも起きているというわけだ。

 医師で昭和大学客員教授の二木芳人さん(感染症学)もこうみる。

「当初、新型コロナウイルスは体内に居続ける傾向はないと考えられてきました。しかし第5波を引き起こしたデルタ株から、オミクロン株のBA.1、BA.5へと変異して進化する過程で、そういった特性を獲得した可能性は否定できません」

 厳密に言えば、「再感染」は以前感染した株とは別の株への感染を指し、リザーバの再活性化は「再発症」と呼ばれる。しかし感染する側からすれば、コロナの症状が出て、PCR検査で陽性判定が出る以上、「2回目の感染」と一緒だ。だとすれば、一度感染した人は免疫力が低下したタイミングで何度も“かかる”といえるのだ。

ワクチン接種で免疫力が低下

 コロナ蔓延以降、政府はワクチン接種を推奨してきた。だが、何度も接種を受けたのに、2回感染した人が後を絶たない。

「免疫に弱点のある人が一定数いるのも事実です。ワクチンを打っても抗体ができにくいとか、あるいは感染した後も抗体ができない人がいます。そういった免疫形成が苦手な体質の人は、複数回感染する可能性があるといえます」(二木さん)

 ナビタスクリニック理事長で内科医の久住英二さんは、ワクチンの効果は限られるのではないかと指摘する。

「現在のワクチンは流行初期の武漢株が登場した際につくられたもので、現在流行しているオミクロン株に対応するものではありません。また、変異株は過去の抗体をすり抜ける特性も持っています。オミクロン株は感染力が強く、いまのワクチンでは感染予防効果は低いと考えていい」

 政府はオミクロン株に対応する改良型ワクチンを、10月半ばから追加接種で使用する方針を固めた。2回目までの接種を終えたすべての人を対象に、接種を始める方向で準備するという。

 政府は3回目、4回目、さらには5回目へと接種を推し進める。だが、この「追加接種」が複数回の感染を引き起こす可能性が指摘されている。

厚労省が発表した今年4月11日以降の調査結果によると、ワクチン未接種者と2回接種者の10万人あたりの新規陽性者数にはほとんど差がなかった。だが年齢層で区切ると、40代と60代、70代では未接種者より2回接種済みの人の方がコロナに感染していたという事実が明らかになった。

「現在接種しているワクチンは、もともと体に備わった免疫力を低下させる可能性があります。免疫力が落ちればコロナ感染の可能性が高まる。いまはまだ3回目接種のデータは出ていませんが、今後“3回接種した方がコロナにかかりやすかった”というデータが出る可能性もあります。さらに、ワクチンを追加接種した人が複数回感染するケースも増えるのではないでしょうか。日本を含めたワクチン接種率が高い国ほど、再感染者が増えることも考えられます」(小島さん)

 感染予防の目的で接種したワクチンが原因で、複数回にわたって感染するとなれば本末転倒というほかない。

 小島さんが続ける。

「小児科医である私の経験では、生まれてから一度も風邪をひかない赤ちゃんがいる一方、毎月のように発熱を繰り返して受診する赤ちゃんもいます。新生児ですから獲得免疫の差でなく、生まれ持った自然免疫に個人差があると考えられます。コロナでも自然免疫の個人差で、かかりやすい人、かかりにくい人がいるのではないかと考えています」

 コロナは未知のウイルスであり、未解明の点が多い。どんな危険が潜んでいるかわからないのは確かだが、変異を繰り返すなかで無症状の陽性者が増えるなど弱毒化しているのも事実。複数回の感染を前提に、コロナ禍での生活を考えるタイミングに来ている。

※女性セブン2022年9月1日号

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