新型コロナウイルス

オミクロンBA.5にワクチンの効果はほとんど無い

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オミクロンBA.5感染拡大により、過去最多の1日あたり感染者数を記録しています。

国内感染者数の累計が1,192万人(前出NHKサイト)となったことから、国民の感染対策やマスク着用に効果があったとは言えないことになります。さらにアドバイザリーボードの資料を見れば分ることですが、重要なことは国民の8割以上がワクチンを接種し、3回目も6割というのに、いつまでたっても感染拡大が収まらないということです。ワクチンは変異株に対して有効性を持たないことが明らかになっています。

そのことの説明として、オミクロンBA.5は免疫をすり抜けて感染するというのがあります。小島政次先生によれば、『米国からの報告では、3回目のファイザーワクチンを接種することで武漢株に対する中和抗体価は5,783倍に増加したが、5月までは検出されるオミクロン株のほとんどを占めていたBA.2に対する中和抗体価は829倍に過ぎなかった。さらに、BA.5に対する中和抗体価は275倍に低下した。』つまり、ウイルスは変異を繰り返す度に、ワクチンによる抗体をすり抜けて簡単に感染させてしまうことになります。

ウイルスの変異はこれからも続いていきますから、人の免疫をすり抜けて生き延びるウイルスがさらに登場してきます。一方、重症化率は変異の度に減少していますから、過度に恐れる必要はないと言えるでしょう。問題は接種した人たちがあらゆる感染症に罹るのではないか、という懸念の方です。下は国内重症者数の指標となるecmo装着数の推移です。重症者は低く抑えられていることが分ります。

BA.5に4回目ワクチン接種は有効か?小島 政次 名古屋大学名誉教授

コロナの流行が止まらない。7月23日には、全国の1日当たりの感染者数は20万人を超え過去最多となった。当初、4回目のワクチン接種は、3回目接種から5ヶ月経過した60歳以上の高齢者と18歳から59歳でも基礎疾患があって重症化リスクが高い場合が対象とされた。しかし、感染の急拡大を受けて、全ての医療従事者や高齢者施設の職員が接種対象に加えられた。

2021年の後半に出現したオミクロン株は短期間に変異を繰り返し、BA.1からBA.5までのサブタイプを生じた。今回、急速に感染が拡大した理由として、ワクチンの感染予防効果の減衰や、免疫回避力が強い新規サブタイプであるBA.5の出現が挙げられている。前者が理由であれば、4回目接種によるブースター効果が期待できるが、後者であれば4回目接種を行っても感染予防効果の増強は期待し難い。

Teka77/iStock

厚労省が発表するワクチンの効果は、4月後半になって集計方法が変更された。変更後の4月25日から5月1日までのデータを用いて、ワクチンの感染予防効果を算出した結果を表1に示す。2回接種のみでは、65歳未満で11%、65歳以上の高齢者では-27%と感染予防効果は消失したが、この時点では3回目接種をすることで、感染予防効果は65歳未満で64%、65歳以上では57%と回復が見られた。

しかし、接種歴不明の感染者が感染者全体の23%を占めており、接種歴不明者の多くは、実際にはワクチン接種済みと考えられることから、2回接種、3回接種の感染者の割合に応じて接種済みに振り分けて感染予防効果を検討した。すると、2回接種済みでは、65歳未満で-50%、65歳以上では-104%となり未接種者と比較して感染し易いことが示された。3回接種しても、感染予防効果は65歳未満で39%、65歳以上では31%であった。

表1 厚労省のデータ(4月25日〜5月1日)に基づくワクチンの感染予防効果
(接種歴不明者を2回、3回接種者に振り分けた場合)

2ヶ月経過した7月4日から10日までのデータを用いて算出した表2の結果では、3回目接種群においても、感染予防効果は65歳未満では35%、65歳以上では18%に低下した。さらに、接種歴不明者を振り分けた補正値では、65歳未満では15%、65歳以上では-7%に減衰した。

表2 厚労省のデータ(7月4日〜7月10日)に基づくワクチンの感染予防効果
(接種歴不明者を2回、3回接種者に振り分けた場合)

図1には、この2ヶ月間の3回接種群における感染予防効果(補正なし)と、コロナ感染にBA.5が占める割合の推移を示す。BA.5の占める割合は、6月の第1週では1%に過ぎなかったが、1ヶ月間で50%を超えるまでに急速に拡大した。3回接種者の感染予防効果の減衰する速度は、BA.5の出現に一致して急速に加速している。

図1 3回目ワクチン接種者における感染予防効果とBA.5の占める割合の推移

政府は、ワクチン効果の減衰を考慮して、3回目接種から5ヶ月以上経過した高齢者を4回接種の対象とした。わが国では6月末において、7,825万人が3回目のワクチン接種済みであるが、ワクチン接種から5ヶ月以上経過したのは3回接種者の6%に過ぎない。それにもかかわらず、6月に入って、感染予防効果が急速に減弱したのはBA.5の出現によるところが大きいと考えられる。3回接種者における感染予防効果の減少とBA.5の占める割合の増加の相関を検討したところ、相関係数は-0.88と強い負の相関を示した。

米国からの報告では、3回目のファイザーワクチンを接種することで武漢株に対する中和抗体価は5,783倍に増加したが、5月までは検出されるオミクロン株のほとんどを占めていたBA.2に対する中和抗体価は829倍に過ぎなかった。さらに、BA.5に対する中和抗体価は275倍に低下した。

一方、イスラエルからは、ファイザーワクチンの4回接種群と3回接種群の感染予防効果を比較した研究結果が報告された。4回目接種から1ヶ月後では64%の感染予防効果が得られたものの、2ヶ月後には29%に低下した。研究期間が2022年1月10日から3月13日でBA.5が出現する以前なので、BA.5が感染のほとんどを占める現在では、感染予防効果はさらに低下していると考えられる。

コロナワクチンを接種する目的は、感染予防ではなく重症化予防にあるので、ワクチン接種の意義については、重症化予防効果の視点に重きを置くべきであるという意見があることも承知している。コロナワクチンの効果を検討した多くの研究では、感染予防効果と比較して、高い重症化予防効果が報告されているが、どうして重症化が予防できるかについては、十分説明されていない。一つの説明として、コロナ感染の重症化に免疫反応が関与していることから、ワクチンに免疫修飾作用があると考えるのも挙げられる。

ところで、先に発表した論考において、国立感染症研究所(感染研)のデータを用いて、わが国におけるコロナワクチンの重症化予防効果を検討したが、重症化予防効果も感染予防効果と同様、時間の経過とともにその効果は減衰することが判明した。

接種から1年以上経過した2回接種済みの高齢者では、未接種者に比べてかえって重症化のリスクが高い結果が得られた。残念ながら、4月以降は感染研からワクチン効果のデータが公開されなくなったので、その後のフォローができていない。

そこで、新型コロナ感染者の重症度とワクチン接種回数が公開されている浜松市のデータをもとに重症化予防効果の検討を行った。浜松市のデータでは厚労省とは異なり感染者全員のワクチン接種回数が把握されているので、接種歴不明者の扱いを考慮する必要がない。

人口規模が79万5千人の浜松市では、2022年1月1日から7月14日までの重症者数は7人に過ぎないので、216人の中等症を加えて、中等症・重症化予防効果を検討した。その結果、4月14日までの検討では、2回接種群、3回接種群の中等症・重症化予防効果は38%、90%であったのが、7月14日までに調査期間を延長するとそれぞれー25%、76%に低下した。

感染研からの報告では、7月の第4週には、BA.5の検出割合は96%に達している。今回の検討や海外からの報告を見る限りでは、BA.5が蔓延した状況では4回目ワクチン接種の感染予防効果は期待できないと言わざるを得ない。さらに、ワクチン接種による副反応も考慮すると、4回目接種については慎重な態度が必要と思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*

19 − fifteen =