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今秋始まる子どものコロナワクチンを接種するべきか?
6月16日に開催された第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会での審議の結果、9月20日から6ヶ月以上の乳幼児を含めて全年齢層を対象にXBB対応ワクチンの接種が開始されることになった。そのほか、この会議では、いかに子どものコロナワクチン接種率をあげるかについても議論された。日本では、これまでの乳幼児のコロナワクチン接種率は5%にも満たない(表1)。
会議に出席した参考人の一人は、母親の立場として子どもの接種率が低いことに対する不安を訴え、行政からワクチン接種を促すように働きかけることを要望した。他の参考人は、コロナとインフルエンザワクチンの同時接種の推進を主張した。
参考人の意見を受けて、脇田分科会会長は、学会、なかでも小児科学会への働きかけが小児の接種率を向上させるには重要であると発言している。
これまで、日本医師会は全年齢層に対するコロナワクチンの接種を推進してきたが、釜萢常任理事は、7月26日の記者会見で、
65歳以上の人や基礎疾患がある人以外が重症になる割合はそれほど高くはない。全体の感染を抑えるために無理をして接種してもらうというよりも、個人で選択してもらう時期に入った。
と発言し、すべての人に積極的に接種を呼びかける必要はないのではないかという認識を示した。健康な小児を含めてワクチン接種を呼びかけていた従来の日本医師会の主張を取り下げたのだ。なお、釜萢常任理事は小児科医であり、上記の予防接種・ワクチン分科会の委員でもある。
しかし、釜萢常任理事は8月2日の記者会見では、「ワクチンの効果に対する信頼性は揺るぎないものがある」としてワクチンの有効性を強調し、トーンダウンとも取れる発言を行なった。
さらに、8月9日に開催された第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で、森岡参考人は、日本小児科学会を代表して小児へのコロナワクチン接種を推奨する理由を説明した。7月26日の釜萢常任理事の発言に対する、ワクチン推進派の巻き返しとも取れる。
筆者はこれまで、日本小児科学会の小児へのコロナワクチン接種を推奨する提言に対して疑問を投げかけて来た。
森岡参考人は、日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会が6月9日に提言した”小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方”をもとに、以下の3つの理由をもって、小児へのコロナワクチン接種を推奨しているが、それぞれの理由についてその妥当性を検証する。
1)WHOは健康な小児に対するコロナワクチン接種は優先度が低いとしたが、国ごとに疾病負荷、費用対効果や機会費用を照らし合わせて方針を検討すべきとしている。WHOはあえて国ごとの疾病負荷を考慮すべきであると言及しているが、日本人小児における疾病負荷は、諸外国と比較して高いのだろうか。
日本における、2020年の流行開始以来、2023年3月末までの0〜19歳の年齢層におけるコロナによる死亡者数は84人で、人口100万人あたりでは4.2人である。一方、米国における2023年6月末までの0~18歳の年齢層におけるコロナによる死亡者数は1,847人で、人口100万人あたりでは23.7人となり、日本の5.6倍である。
米国における2021年8月から2022年7月における0〜19歳の年齢層における死因統計では、コロナによる死亡は全死因のなかでは8番目、病死では5番目である。日本人小児におけるコロナの疾病負荷を海外と比較した場合に、高いとは思えない。
会議では触れてないが、WHOの指針には、ロタウイルス、麻疹、肺炎球菌などの既存のワクチンと比較して小児におけるコロナワクチンの優先順位はずっと低いと述べられており、言外に健康な小児に対する接種に消極的であることを匂わせている。
2)国内では、稀ではあるが脳症、心筋炎などの重篤な合併症の報告があるほか死亡例の報告もある。
会議では、国立感染研が12月末に発表した“新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査の結果”をもって小児にワクチン接種を推進すべき理由としている。
筆者は、この報告に関する疑問点について以前述べたことがある。
感染研からの報告では、2022年1月から9月30日までの20歳未満の死亡例を62人としているが、厚労省が発表する感染症発生動向情報によれば、同期間の20歳未満のコロナによる死亡例は34人で大きな乖離がある。
そこで、厚労省が発表する人口動態調査にあたってみると、2022年1月から9月30日までの20歳未満の死亡例は45人であった。人口動態調査は死亡診断書に基づいており、最も信頼性があると考えられる。
人口動態調査によると、流行開始以来2023年3月末までの、0〜4歳、5〜9歳、10〜14歳、15歳〜19歳の年齢層におけるコロナによる死亡数は、それぞれ、38人、22人、15人、9人であった。死亡例のおよそ40%が基礎疾患を有していた。(図1)
また、小児にワクチン接種を勧める理由としてコロナ感染後の急性脳症や心筋炎の増加が挙げられている。全国調査の結果では、2020年1月1日から2022年5月31日までに、34人が急性脳症を発症し、4人が死亡、8人に後遺症が見られた。
Severe pediatric acute encephalopathy syndromes related to SARS-CoV-2
また、日本集中治療医学会のまとめによると、第7波と第8波におけるコロナ感染後の小児重症・中等症例の発症数は424人で、うち急性脳症の発症数は76人であった。感染研の報告する死亡例には14人の急性脳症が含まれていた。
一方、わが国では、毎年100〜300人の小児がインフルエンザ脳症を発症し、その致死率が30%であることと比較すると、コロナによる急性脳症はインフルエンザ脳症と比較して、小児にとってより脅威というわけでもない。
感染研の報告には、8人の心筋炎による死亡例が含まれていた。また、コロナ感染後の心筋炎の発症数ははっきりしないが、日本集中治療医学会のまとめでは、心筋炎/心不全の発症は7人であった。
コロナワクチンの接種の是非を考えるにあたっては、ワクチン接種による負の側面も考慮する必要があるが、会議ではワクチンの持つ負の側面についてのデータは紹介されていない。
表2には厚労省に報告のあった20歳未満のワクチン接種後の死亡例を示す。11人が接種後3日以内に発症しており、5人の突然死と4人の心筋炎による死亡が含まれている。2023年4月30日までに厚労省から報告のあった2,180人のワクチン接種後死亡例のうち、ワクチン接種と死亡との因果関係が認められたのは2人に過ぎないが、心筋・心膜炎で死亡した症例11の14歳女児がその一人である。
ワクチン接種後の心筋炎・心膜炎の発症はよく知られており、厚労省の副反応報告には20歳未満の心筋炎・心膜炎発症例は119人が報告されている。
以前、厚労省は図2を使って、ワクチンを接種した場合は、コロナに罹患した場合と比較して心筋炎の発症リスクが低下することを理由にワクチンの接種を推奨していた。しかし、ワクチン接種後のリスクは健康人が主であるのに対して、コロナに罹患した場合のリスクは、コロナ入院患者を対象としており、比較の対象が不適切であることを指摘され、この図をホームページから削除した経緯がある。
日本小児科学会は、2022年9月に発表した”5〜17歳の小児に対する新型コロナワクチン接種に対する考え方”という提言の中で“心筋炎・心膜炎の発生報告が稀にあるが、厚労省からの情報提供が充実している”と、この図の参照を推奨している。
最近の、北欧からの研究では、この図とは反対に、ワクチン接種後の心筋炎の発症リスクはコロナ感染後と比較して4.9倍あると報告されている(引用5)。
3)小児に対するコロナワクチン接種には発症予防や重症化予防効果があることが知られている。
森岡参考人の発表は、「重症化が防げる可能性があり、接種を希望する小児にその機会を提供する必要がある」とまとめており、具体的なワクチン効果の数字は述べられていない。
小児科学会が、6月に発表した提言では、5〜11歳の小児を対象にした2つの比較試験と15の観察研究を対象にしたメタアナリシスの結果を紹介し、小児へコロナワクチンを推奨する根拠としている。
感染予防効果や発症予防効果がメタアナリスの結果確認されたとしているが、それぞれの研究における観察期間の中央値は7〜90日と短期間である。
多くの研究は、ワクチン接種後1〜3ヶ月の短期間に感染や発症予防効果が消失することを報告しており、ワクチン接種を推奨するにあたっては、この点についての考慮が必要であろう。なお、肝腎の重症化や死亡予防効果については触れられていない。日本人小児を対象にした研究が一つも含まれていないことも気になる。
日本小児科学会の一般会員の中には、健康な小児へコロナワクチン接種を推奨する小児科学会の方針に反対する会員も少なからずいると思われる。SNS上では、国民から日本小児科学会や小児科医に不信の念を抱く声が溢れており、このような状況が続けば、わが国の小児医療にとってマイナス要因にもなりかねない。