睡眠薬サリドマイドで新生児に奇形が発生、被害が広がるにつれドイツ政府は被害が増えているという疫学調査の結果により販売を中止した。一方日本ではサリドマイドで奇形が生じるという科学根拠はなく、そのまま使用して問題はないと言った。しかも御用学者を登場させて問題の火消しを図っている。同様のことはスモン薬害事件、ジフテリア予防接種禍事件、ペニシリンショック死事件、薬害エイズ事件、薬害肝炎事件、HPVワクチン禍事件などに繋がっており、今回mRNAコロナワクチンでは今までの薬害を凌ぐ遙かに大きな死亡者を出している。
このようなことから厚労省は何度も繰り返し、繰り返し、間違いを犯しており、国民の健康を守るような役割を果たしているのか甚だ疑問で、今回のコロナ問題で責任が明らかになった場合、省庁解体になる可能性がある。公衆衛生を理由に誤情報を正すというが、そもそも何が誤情報にあたるのかさえ明らかに出来ないため、厚労省役人に判断など出来るはずもないだろう。出来ることは今まで通り国の方針に沿う御用学者を使ってお墨付きを与えることぐらいしかない。
政府の「ワクチンデマ潰し」「反ワクの徹底排除」がとんでもない悲劇を招くワケ
政府が「デマ」を取り締まるのは愚かな行為
国が、ワクチンに関するデマやフェイクニュースの「対策」に本格的に乗り出した。
4月24日に公表された「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定案によると、政府はワクチン接種や治療薬・治療法に関する科学的根拠が不確かな情報等、偽・誤情報等に関してモニタリングをして、国民のメディアリテラシー向上のために各種媒体を用いて「啓発」をしていくという。
4月23日の参議院財政金融委員会で、内閣府がワクチンの接種推進のために3200万円をかけてYouTuberを起用した動画9本を作成したことを明らかにしたが、このような形で、ワクチンデマやフェイクニュースを打ち消していくというわけだ。さらに、対策は「削除依頼」や「発信者情報開示請求」にも及ぶ。
つまり、これはいよいよ政府がちまたに氾濫する新型コロナやワクチンに関する情報の「統制」を始めたというわけだ。
そう聞くと、「素晴らしいじゃないか!反ワクや情報弱者がSNSで拡散している陰謀論に扇動される人も増えているので厳しく取り締まるべきだ」と拍手喝采の人も少なくないかもしれない。
そんな気分に水を差すようで恐縮だが、個人的には「ひどい悪手」という印象しかない。これによって偽・誤情報が消えるわけなどなく、むしろこれまで以上に氾濫する恐れもある。
国が「良かれ」と思ってやることが、なぜそんな逆効果になるのかというと、そこにどんな「正義」や「エビデンス」があったところで、「国家権力が個人の言論を握りつぶしている」という民主主義的に最悪なことをしているからだ。
政府が「デマ」を取り締まれば、政府の主張を信じている人たちは、胸がスカッとして正義が実現されたと感じるだろう。しかし、世の中にはもともと政府の主張を疑っている人も多い。彼らからすれば、「言論封殺」以外の何者でもないので、さらに不信感を強めていく。また、「デマを流した」と断罪された側の人たちは、国への怒りと反発心が強まり、より過激な言動をしていく恐れもあるのだ。
要するに、デマだろうがフェイクニュースだろうが、個人の言論に国家権力が介入するということは、延焼している森林火災に、ヘリコプターで上から灯油をかけるのと同じくらい「愚かな行為」なのだ。
どこまでが「科学的根拠のない偽・誤情報」なのか、真偽は?
もっとややこしいのは、政府が偽・誤情報の判断基準としている「エビデンス」というものが常にアップデートされていくということだ。
例えば、先ほど取り上げた「ワクチンで内臓が溶ける」というのを主張している医師らもいる。
京都大学名誉教授の福島雅典氏など、ワクチンの安全性に疑問を持つ医師や研究者が23年6月に設立した「一般社団法人ワクチン問題研究会」という団体がある。
この団体が、2021年12月から2023年11月までの2年間に、国内の医学学会で報告・検討された疾患をまとめたところ驚くべき結果が出た。「初期のワクチン接種後症候群」として、血小板減少、心筋炎、深部静脈血栓症、ギラン・バレー症候群、リンパ節腫大など201もの多岐にわたる疾患があることが判明したのだ。血栓のような血管系障害が目立つものの、あらゆる体内組織で発症していることがわかったというのだ。さらに、この結果を厚労省に乗り込んで発表した福島氏は、会見中に耳を疑う事例を述べている。
「28歳の男性は心臓が溶けており、これまでの医師経験の中で見たことがない症状が新型コロナウイルスワクチンによって引き起こされている」(Medical DOC3月2日)
ただ、このような話は厚労省からすれば「科学的根拠のない偽・誤情報」という扱いになるだろう。
厚労省の「新型コロナワクチンQ&A」の「ワクチンの安全性と副反応」によれば、ワクチンに認められている副反応は「疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み等」と「稀な頻度でアナフィラキシー」。そして「頻度としてはごく稀ですが、心筋炎や心膜炎を疑う事例」があるだけだ。「ワクチン問題研究会」が発表した血小板減少や血栓など多岐にわたる全身疾患は含まれていない。ましてや、「心臓が溶ける」なんてことは認められていない。政府が認めていないということは、「偽・誤情報」ということだ。
それはつまり、今回の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」に照らし合わせれば、福島氏やワクチン問題研究会がこれから発信する情報というのは、政府がモニタリングをして、「科学的根拠がない」とジャッジすれば、プラットフォーム事業者やプロバイダーへ「削除依頼」もできるということだ。
「エビデンス」を国がジャッジする危険性
これを「ワクチンの正しい知識を広めるためには仕方がない措置」と捉えるか、「民主主義の根幹を揺るがすとんでもない言論統制」と捉えるかは、個々の感覚によって違ってくるだろう。
「国家への忠誠」とか「個人の自由意志」という、人が生きていくうえで何を大切にしているかということで、見えてくる景色が180度変わってくるからだ。
ただ、歴史を真摯に学べば、国家が病や薬害についての「エビデンス」をジャッジして、国民に言論統制を求めていくというのは、目もあてられないほど、ひどい結末を招くことがわかる。
その最もわかりやすい「悲劇」がハンセン病だ。
「らい菌」に感染することで起こるこの病気は、他人への感染力が非常に弱く、治療法もある。かつては伝染する恐ろしい病気と誤解されて、患者は療養所に隔離されるなど非人道的な扱いを受けていた。しかし、1943年にアメリカで治療法が確立されたことをきっかけに、世界中で通院し、薬での治療ができるようになった。
しかし、そんな「エビデンス」に背を向けて、ハンセン病患者を見つけ出しては、療養所に押し込めるということを、政府や自治体をあげて推進していた国がある。そう、日本だ。
海外のハンセン病患者が病院に通いながら治療をしていた1960年代でも、日本では「無らい県運動」が盛り上がっていた。これはハンセン病の根絶を掲げた厚生省(当時)が地方自治体や民間に呼びかけて、自宅でかくまわれている患者を見つけ出して、療養所送りにするという「患者狩り」という官民運動だ。
では、なぜ日本人がそんな愚かな隔離政策を続けていたのかというと、それが日本政府の「科学的根拠に基づく正しいハンセン病情報」だったからだ。だから今の「ワクチン情報統制」と同じように、政府の考えと合致しない「偽・誤情報」をふれまわる医師や研究者は「言論封殺」をされていったのだ。
その代表が、故・小笠原登医師だ。この人は戦前からハンセン病が伝染するというのは「迷信」だと訴えて、アメリカで治療法が確立する2年前の41年には、新聞で「治療ができる病」だと主張する。
しかし、これが政府の方針に合致する研究者、マスコミ、そして学会の逆鱗に触れてボロカスに叩かれて、「偽・誤情報」扱いにされた。この言論統制が、1953年の「らい予防法」(全てのハンセン病患者を隔離の対象とし生涯施設に入所させる)にもつながっていった。
日本政府がこの法律を廃止して、自分たちの過ちを認めたのはそれから43年が経過した1996年だ。アメリカで治療法が確立してからは55年にも及ぶ。国家権力が「正しいエビデンス」を決定して、そこから少しでも外れる「異論」を封殺するということをやると、とんでもない悲劇を招くケースは世界中に無数にあるが、日本の場合、ハンセン病の歴史を見れば明らかだ。
もっと詳しく知りたいという人は、ぜひ厚労省の「歴史から学ぶハンセン病とは?」というページをご覧になっていただきたい。国の傲慢さがよくわかるだろう。
「ワクチンに関する偽・誤情報を取り締まればみんなハッピー」なんて浮かれている厚労省の役人の皆さんもぜひこのページをお読みになって、その愚かさを学んでいただきたい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)