過去記事2013-8-27
この記事は2013年8月当時のものです。これだけ沢山のアクセスを戴きまして、大変ありがとうございます。今でもデジタコが不必要であるという見解に、変わりはありません。業界(メーカー)と政治家、国交省の癒着の結果の成果物として、また1つ出来上がりました。
現場の職業運転者に対して、負担を軽くするどころか余計な仕事を増やし、増々がんじがらめにして、彼らの自主性を奪ってしまう、それがデジタコだと思っています。その半面で事故は減ったのでしょうか。いいえ、デジタコがあろうがなかろうが変わりはありません。事故多発事業所は相変わらずです。
文章に分かり難い表現があるので修正しました。
デジタルタコグラフの導入義務化へ向けて、国交省では検討に入っている。
デジタコで労働時間の管理や過労防止、安全運転の指導が出来るという。
筆者はそうは思わないが、デジタコだけで乗務員の運行管理が出来る、または事故防止が出来る、という方には以下の問題に答えてほしい。
以下は筆者が実際に目撃し、体験したことであるが、デジタコには記録されないのだ。
〇『高速 ・ 一般道』切り替えボタン。
高速道路入り口につながる片側3車線の一般国道区間。そこでは約2~3キロに渡って信号のない区間があり、乗務員はスピードアップのため、ボタンを切り替えて一般道を高速モードで走行している。
夜中の3時過ぎだから周囲の車は80~100キロ近くで走る乗用車ばかり。このようなところで60キロで走れるのだろうか。まして60キロしか出せないため左車線を走るが、高速入り口は3車線の一番右なのだ。
進路変更中に危険な目に合うことは、分かっているではないか。
高速出口も同様に最初の信号で止まるまで、高速モードで走り続ける。
〇一般道を社速60キロとしているところが多いが、狭い道で電柱や店のテント、障害物が道路に張り出している所を60キロで走行したら乱暴運転とならないか。
社速が許すなら、時間の制約もあるし60キロギリギリで走りたいと思う。当然このようなところでは危険運転となるが、デジタコには記録されないのだ。
〇信号の変わり目で咄嗟にブレーキを踏めば、急減速(急ブレーキ)のアナウンスとともに記録されるが、そのまま行ってしまえば記録されない。どちらが危険かは言うまでもない。デジタコは通過する方を促していないか。
ある職業運転者が言っていたのだが、『急減速ばかり気にしていては、本当に強く踏まなければならない時に踏めなくなる』というのだ。デジタコは事故を誘発しているのか。
〇スピード超過。危険を避けるために敢えてアクセルを踏む場合がある。首都高は合流区間が極端に短いところがあり、遮音壁に隠れて乗用車の発見が遅れやすい。こちらの車が大きくてびっくりしたのか、合流してくる乗用車は急停車。お互いに急ブレーキでタイミングが取れない。
〇ボタン操作。あまりにも煩雑でかえって運転の邪魔となる。運転に余計な動作を付け加えられる。荷積、荷卸、他作業、待機、実車、空車など作業の途中で押さなければならず、忙しい時はイライラする。
荷積、荷卸は狭い場所が多く、特に逐次の安全確認を欠かせない。普通は後に控えている車があるのだから、のんびりやっている訳にはいかない。そのようなときにボタン操作?
おまけに紙の運転日報も記入するのだから何のため?
安全確認が疎かにならなければいいのだが。
本来実車とか空車などの区別は、必要がないはずである。GPS装備なのだから客先に就いたのなら荷卸しに決まっているだろう。会社の管理者はそのようなことも分からないのだろうか。
しかしこれを押し忘れると、帰社した時に責められるのだから、本当にバカバカしい限りではないのか。
もうひとつ、後ろの扉を開けた時に荷卸しの設定になる車がある。一見合理的だが、しかしそうでもないのだ。
高速を降りて、荷崩れがないか確かめるため後ろを開けた時に、GPSと連動してそこから一番近い店舗の情報を拾ってしまう。するとその店舗に納品した記録が残ってしまうのだ。
このボタンのために、これだけ煩わしい業務が余計に増えているのだ。
さらに踏み込んでいうなら・・・・
〇このドライバーは走行中、どれだけの車間距離を取っているのか、デジタコで分かるの?
〇頻繁に割り込みや車線変更をする人は危険に遭遇する可能性が高いが、デジタコで分かるの?
〇交差点右左折時の安全確認をどれくらいしているのか、デジタコで分かるの?
〇譲る運転ができているかどうか、デジタコで分かるの?
〇周囲にどのくらい注意を払っているのか、デジタコで分かるの?
こんなものを盲信して科学的証明だの運行管理だのと言っている人の気が知れません。
つまり、デジタコはドライバーの運転をアシストして安全に導くものではなく、ドライバーの運転行動を監視し、ドライバーの負担を増大させるけれども、事故防止にはほとんど関係のないものであることが分かったのだ。
しかもマニュアル化とデジタコを連携させて、何でもかんでもマニュアルにしてしまう。機械に使われているのか、と辞めて行った人いる。
マニュアルで事故防止が出来ると考える人は、本当におめでたいものだ。
評価の『安全性』や『経済性』は高得点であっても、実際には、安全運転であるかどうかはわからない、ということなのだ。
国土交通省では、デジタコが『安全運転教育』に活用できるとして、3点を挙げている。
①運転者の安全運転管理の徹底
②エコドライブの推進による安全運転の促進
③運転者の労務管理の徹底
②は低速安定走行による燃費の向上を目指すのもであり、一見してエコドライブをしていれば安全運転につながる印象もあるが、具体的に安全とどう結びつくのか分からない。
出来るだけ信号で停止しない方が燃費は向上するのではないか、と皮肉も言いたくなる。燃費の問題なら各企業が独自に決めて導入すれば良い訳で、何も義務化する必要はないだろう。
③については長時間労働による過労運転防止が目的。アナログのように誤魔化しがきかないそうだが、4時間以内に1回の休憩が取れているか把握できる。
確かに過労運転の防止は、事故防止の重要項目である。 しかしそれは運行管理が適正に行われている限りでの話で、過労が問題になっている事業所で果たして守られるのだろうか。
実際に過労運転が発覚するのは、重大事故を起こした事業所に指導監査が行われた時だけではないのか。長時間労働の話は、どこの運送会社でもあるのだが。
地方運輸局の指導監査が行われない限り、是正されないというのでは、データを積み上げるだけに終わってしまうだろう。
①については法定速度遵守、急加速、急減速などの指標を用いて運転者教育を行うという。もちろんこの3つは、事故との関係が深い項目である。
しかし、上に挙げた理由から事故防止の指導としては極めて不十分である。デジタコのデータだけを盲信することは、他の重要な要素を捨象することになってしまう。
〇何故デジタコと事故防止が結びつくのか良く分からなかったので、国土交通省自動車交通局安全政策課に問い合わせてみた。
デジタコ導入の目的は過労対策で、労務管理を適正に実施してもらうこと。また、事故が起こった時に各要因を検証するデータとして活用し、今後に役立てること。
さらに、デジタコ導入当時に実施したアンケート調査からは、事故数が減少したとの報告が多かったため、事故防止に効果があると考えている、ということだ。
ここで重要なのは『事故が起こった時に』というくだりである。要するに一度事故が起こらなければデジタコは役に立たない、という事を言っている。事故防止は予防でなければならない!はずである。
さらに筆者は5年後、10年後のアンケートはあるのか国交省に尋ねたが、実施していない様子。
何故5年後、10年後なのか、というと、あくまで筆者の考えという事を断ったうえで
デジタコを導入したことで、それまでの運転を巡る環境が変わり、運転行動も一時的に変化したと考えられる。しかしそれは一時的なものであり、時間が経てばまた元に戻るだろう。
事故の要因は走行スピード、急加速、急減速だけではない。
事実、筆者が体験させてもらった会社では、お盆の前からお盆の期間にかけて毎日1件ずつ事故は発生し、重大事故も起こっている。もちろん、デジタコ装着の車両で。
〇デジタコ以外にやるべきことはある。
デジタコは事故防止にとって役立たないとは言わない。しかしそれだけでは不十分である。デジタコ導入義務化は、見送る方が賢明だろう。
むしろキーパーソンである運行管理者を徹底的にトレーニングすること。
乗務員の体調管理は重要な項目であるが、実際に出来ている運行管理者はどれくらいいるだろうか。
先日の日曜日、首都高5号から外環道へ向かう分岐点でのこと。
分岐点のゼブラゾーンに自家用車が止まっている。見るからにどちらに行こうか迷っている様子。こちらも危険だと思い、減速しながら近づいていく。自家用車のすぐ目の前まで来たとき、何とその車はこちらに入って来くるではないか。
いくら何でも、このタイミングで入ってくるのか!と急ブレーキとクラクション。全くこちら(後方)を見ていない様子。自家用車ではないから、すぐには止まれず、その車の真横で停車した。時速40キロ代まで落としていても止まれない。この区間は80キロ~100キロで走る車が多いため、相当に危険。
接触は免れたものの、デジタコの評価は、急減速1回。
状況も分からないのに、素晴らしい評価ですね。